徒然なるままに、夢を見る。 (ページ50)

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「お前ならこの先どうなるかもう気付いてるだろ……イヤならここで降りろよ」

こちらを見ずにそう言ったつぼ浦。彼が何を言いたいかは、わかってる。私はきっと今までこの関係が壊れることを恐れていた。でもここで引いたり逃げたりしたらもう二度と先に進めなくなる。たとえ何かを手放すことになっても、得体何かがそこにあった。

「イヤじゃないよ。たぶん、私もつぼ浦と同じ気持ち」

「……」

ふぅ、とため息をついたつぼ浦が意を決したようにこちらを向いた。目をそらしたら負けな気がして恥ずかしいけど見つめ返す。どれだけの時が経ったかわからないが「どうなっても知らねぇぞ」と呟いたつぼ浦が右手で私の目を覆った。

近付いてくる吐息に全身の温度が上昇するのを感じる。少し息苦しいくらいに胸のあたりがキュッとなった。心臓が早鐘を打つリズムが耳の奥で響き渡る。触れる寸前でピタリと止まった唇に焦れったくなって自分から唇を重ねた。

我を忘れるほど互いを求め合うように触れては離れてを繰り返す。しばらくして、自分たちがパトカーの中にいることを思い出して車を走らせた。たどり着いたのはつぼ浦の家で、そそくさと車を降りて誰にも見つからないように駆け込んだ。

「つぼ浦、顔真っ赤」

そう言って笑うと、「うるせぇ」と抱き締められる。周り全部つぼ浦の匂いに囲まれて、今まで隠そうとしていた好きという感情がとろけて爆発していく。

「私たぶん……もう戻れないよ」

今までの特殊刑事課には戻れない。きっと一緒にいるだけでニヤけてしまうから、皆の迷惑になっちゃうから。それはどこで修行をしても変えられない。開けてはいけなかったパンドラの箱。

「戻らなくてもいいんじゃねぇか？お前がそれでもいいのなら」

むしろオレとしては戻って欲しくないかもな。少し不安そうに言ったつぼ浦にすかさず「どうして？」と声を掛ける。彼は少し考えて口を開いた。

「Aは色んなヤツに好かれてる」

「そんな事ない」

「あるぜ。……オレはお前を独り占めしたいから、もう警察には戻らないで欲しい」

「でも警察の皆にお世話になりっぱなしで」

「じゃあ、一週間だけ試してみるか？」

今までのフリしてそれで一週間大丈夫なら警察として、ダメなら警察を辞める。でも、考えて無かった……そもそも自分達の関係が壊れるかもしれない可能性もあったということ。