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じゃあ私のやるべき事はなんだ？とりあえず服ほしい、ってことでさっきの鹿さんの亡骸から毛皮を拝借する。それを川でばしゃばしゃ洗ってこびりついた血や肉を落とす。吐きそうになっている私を狼さんはただ見つめるだけ。あの子が何か変なことを始めた。そんな位にしか思ってないのだろうけどなんか緊張した。
とりあえず大きな鹿さんだったからワンピースのような形で体をおおうことが……出来たのか、これは？何とも残念すぎる出来に裁縫のできない自分を呪う。てか、針も糸もないから無理ゲーだよね？どう頑張ったってバスタオルの延長にしかならないもん、ドンマイドンマイ。
そして次は食べられそうな木の実を探す。何故かここでも狼さんが過保護っぷりを発揮して、私が食べようとした木の実を叩き落としてきたり止めなかったり。きっとこれは毒のあるなしを判別してくれているのだろう。
狼さんの判別のお陰で木の実を食べられるようになったがそんなもので腹は満たされるわけもなく、次なる私のミッションは火を起こすことだ。なんか、棒を板にスリスリしたら火がつくイメージがあるがただの板と棒だけでは一生火は起こせない。
火だねとなりそうなものを片っ端からかき集める。枯れ葉や松ぼっくりなどから細長くてまっすぐな木の枝、よさげな板をそれぞれ石で加工する。火起こしの動画見といて良かった、と思う反面ナイフが恋しい。この何もない世界においてひしひしと感じるのは文明の素晴らしさ。
元々ひ弱で非力な自分ではすぐに火を起こせるわけもなく、失敗と諦めと絶望と生への執着とを繰り返し何とか着火に成功した。その間も狼さんは私を子と認め、木の実や毛皮を差し入れてくれた。必死の思いで灯した炎はすぐに私の身体を暖めてくれた。
狼さんからお肉を分けてもらい、水で洗って薄く切ったそれを火であぶる。何の味もついてないお肉は現代人の味覚からすればおおよそ食べられたものでは無かったが、生にしがみつく私には涙を流すほどに美味しかった。
それから数日、私は持てる知識全てを集結させ彼と共に生きる術を身に付けたのだった。狼さんと移動をしながら狩りをして食べ物を分けあう。数千年前のゲーム漬けになっていた自分では決して理解できないような自然と共存した今の暮らし。
そんなある日の事、私は初めて石ではない人に出会った。
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作者名：宇治銀時 | 作成日時：2024年1月6日 23時
