徒然なるままに、夢を見る。 (ページ13)

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「如月せんぱーい！お疲れ様っす」

「切原くん！……お疲れ様」

しっぽを振り千切らんばかりに走ってきた切原赤也。初めは「転校してきて女子マネージャーやりたいなんてミーハーだ」とか何とか言って斜に構えていた彼だったが、部活帰りのゲーセンで自分の得意の格ゲーでAにボロボロにされてから子犬と化した。

AはAで弟みたいで可愛いと無意識に甘やかしがちだ。そのかわりと言っては何だがAに甘やかされた分、別の先輩(主に仁王)から引き締められている。

「先輩、今日はちょっと遅かったスね。何かあったんスか？」

「あ、にぉ……えっと、考え事してて」

「悩みとかっスか？俺で良ければいつでも相談乗りますよ！」

嬉しそうに笑う後輩が「さっそく、今日の帰りでも」と持ち掛ければ「じゃあ少しだけ時間もらっていいかな」なんて軽々しく乗っかる先輩。それに対して不機嫌そうに割り込むもう1人の先輩。

「面白そうな話しとるの。俺もまざっていいか」

「げ、仁王サン！俺と如月先輩の約束っスよ」

「別にお前のAじゃないじゃろ」

「それはそうっスけど」

「それを言ったら仁王くんのでも無いけど……それに仁王くんに話すことじゃないし」

きっと彼とのいざこざだって、切原くんなら簡単に笑い飛ばしてくれる。でも、仁王くんだったら何て思われるかわからない。わからないから怖い、だから相談できない。

そう思ったAは仁王の瞳に陰が落ちたのを見てしまった。そして、それが自分だけのけ者にされて落ち込んでしまったからだと解釈してしまった。

「ごめん、そんなつもりじゃなくて。……言いふらさないなら聞いて欲しい、です」

「Aには俺がそんなに口の軽い男に見えとるのか」

問いかけるでもなく、ただポロリと転がり落ちた言葉。すかさず切原くんが「意外と仁王先輩はヒトに話したりしないっすよね！」と明るく返して「意外とは余計じゃ」と仁王くんが笑う。

そんな間もAの心のなかには先程の仁王の言葉が重たくのしかかっていた。正確にはかつて喧嘩別れした時の後輩の言葉が重なった。こんなにも似ていない二人を重ねてしまうのは髪の色が似ているからなのか、それともやはり。