ぎゅうぎゅう ページ17
「ごめ……」
翔さんが困った顔で私に壁ドンするみたいな体勢になってる。
「こっちこそ、すみません、なんか」
「……」
ドアが閉まって、電車が動き出したら、全体的にグラリと、揺れる。
なんとなく向かい合ってるのが照れくさくて少しだけ背を向けるように体を斜めにする。
翔さんもホッとしたみたいに少し体の位置を近づけた。
背中に、体温。
いいにおいがする。
守られてるみたいな安心感。
電車が少し揺れるたびに、抱きしめられるみたいに支えられる。
どきん、どきん。
今日はいつもより距離が近くて話せる感じじゃない。
けど。
守ろうとしてくれて、私はそれを当然かのように受け入れて、例えば電車が大きく揺れた瞬間に。
いつもなら気合で踏ん張れる揺れすら。
それを利用して抱きしめてもらおうとする、女の自分が出てきて困る。
友達なのに？
友達だから？
俯いて、カバンを抱きしめる。
翔さんが、はぁ、と吐息を吐いた。
次の駅について、また何人か出入りして、じりじりと壁の奥の方に追いやられる。
ぎゅうぎゅうなはずなのに、私は全然苦痛じゃなくて。
翔さんを見上げたら、ちょっと辛そう。
もしかしたら、腕立て伏せみたいに、私を守ってくれてるのかも。
「大丈夫ですか？」
「……ちょっとだけ、いい？」
「え？」
「ごめん、次の駅までちょっと」
そう言って、翔さんが私の方に体をくっつけて、横に少し空間を作った。
あ、隣に女の人が居るんだ。
「あ、私大丈夫です、翔さんになら押しつぶされてもちょっと触られても平気です、信頼してます」
「……何を」
目があった。
微笑んだら、翔さんは、見たことないような表情で私を見下ろした。
「……え」
「……」
翔さんが、私を左手で抱き寄せた。
周りから隠すみたいに。
右手で体を支えて翔さんの胸の中に私はすっぽりとはまってる。
「……」
えっとえっと。
これは抱きしめられてるんじゃなくて！
満員電車で仕方なく！
翔さんだって、私を抱っこしたいわけじゃない！
隣の女の人をうっかり触って嫌な思いをさせるより、友達の私のほうがあとでごめんって言えるから！
溜息が聞こえて、翔さんを見上げたら、首筋に少し汗をかいていて、もみあげのあたりも少し湿ってる。
汗っかき。
可愛い。
思わず少し笑ったら翔さんが私をトロンとした目で私を見下ろす。
「……セイラさん可愛い」
翔さんの声に。
ぞくり、と電気が流れた。
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ハル(プロフ) - よしのさん おはようございます。 よしのさんの言葉が好きです。チベットツナギツネも気になって検索してしまいました。笑いました。それだけで少し幸せ、ありがとうございます。 (2021年6月12日 8時) (
レス) id: bf2d6e97a5 (このIDを非表示/違反報告)
Kanchan(プロフ) - Shionさん、やっぱりそうだったんですね！あっちもこっちも心待にしているのも我ながら納得しました、私Shionさんの文章とか雰囲気とか持って行き方？とか本当に好きみたいです。これからもあちこち楽しみにしてます、ご無理なさらず楽しんで下さい！ (2018年10月17日 16時) (レス) id: 74394dd982 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐ(プロフ) - あと、お話の展開が進まなくても、読み返しては文章のひとつひとつを反芻して楽しませていただいてるので、これからもshionさんの好きなように好きなタイミングで更新してくださいね♪＼(^^)／ (2018年10月17日 8時) (レス) id: 657fde68e2 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐ(プロフ) - shionさんが大好きだとおっしゃってたもぐもぐ翔くんシーンがとってもリアルで可愛くて、shionさんの観察眼がさすがです！shionさんのお話はロマンス？もミステリーぽい怖い話も何でも面白くて引き込まれます。大好きです♪←ちゃっかり告白 (2018年10月17日 8時) (レス) id: 657fde68e2 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 初めまして？翔さんも主人公ちゃんもとーっても似たもの通しだと思いながら笑っちゃいましたｗｗｗお互い頭の回転が良すぎて考えすぎちゃう所とか？会話のテンポが心地良いです！ (2018年9月27日 18時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：shion
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年9月14日 8時
