1話 ページ3
「あ、アカハライモリ！」
蛙の声、水鳥の羽ばたく音、雑草の揺れる音、山からの蝉の声。様々な音がざわざわ渦巻く初夏の荒れた田の畦道を歩いていると、逆しまに冬の静けさを思い出す。屋根裏の明かり取りの窓すら雪に覆われてしまうと、全ての生き物が眠りに入って、耳鳴りがするほど静かになる。どこを歩いてもなんの命の気配もしない冬と打って変わって、今は歩いているだけでも小動物を踏み潰さないかと気をつける必要がある。ここが毎年冬は外に出られないほどの豪雪地帯となることなど、今は俺ですら確信を持って言えないほどに打って変わった表情を見せている──ここの、そんな部分が、俺はそれなりに気に入っていた。
幸い老人の多い場所である。田舎医者に訪問医療を取付けるのは実に容易なことで。特に大きな異変はないと診断されたデュースの娘に、俺は「一緒に散歩行かない？遊べる場所教えるよ」と誘った。
デュースの方を振り返った彼女の視線を追って、デュースに目を向けた俺に、デュースはあろうことかたじろぐような仕草を見せたから。俺は「パパはいいから行こうぜ」と彼女を連れ出した。
「お、アカハライモリ知ってるの？」
「うん。毒があるから、触ったら手を洗わないといけないの」
「そうそう。てか俺、こいつ知ってる子だったんなら絶対気ぃ合うから友達になれるぜ。いやー年齢離れてっから無理かと思ってたらアカハライモリ知ってるんや」
「知ってるよ、普通知ってると思う」
「みんな知らないよ。パパとか絶対知らないじゃん」
「……そうかも」
納得の行ったらしい彼女は、田んぼの用水路の中に居る黒いイモリをじっと眺めている。手を出して、力加減を間違いそうになったら止めることを考えながら隣へ膝をついた。
「……パパとはあんまし喋らねえ感じ？」
「うん」
「あー、俺もね、パパともママともあんま喋らねえ感じだったんだ。両方と気ぃ合わなくてさ。でも、まあこうして大人になってみればそんなことマジで関係ねえからさ。そっちもはやく大人になりな。大人楽しいぜ。マジで考えてるのの数倍楽しいから」
「そうなの？」
「うん、そうそう。身長が伸びてさ、見えるモンがバチクソに増えてさ。困ったり悩んだりすることが一気に減るぜ。一個どうにもならなくても、他があるって思えるようになる」
「……」
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功徳(プロフ) - くずきりさん» わーい‼️全部読んでくださってる……いつもありがとうございます🥰今後ともよろしくお願いします💦 (11月10日 22時) (
レス) id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
くずきり - 初コメ失礼します、語彙力イカレてますがぶっ飛びそうな位好きです。主可愛くて愛おしいしスペード可愛い極まりないのに最後でうわ〜て感じ噛まして来て、結局お互いの事も自分の事も一番みたいな…作者様の作品全部好きです応援してます、今後とも応援させて頂きます！ (7月28日 22時) (レス) @page47 id: cd8b5937a1 (このIDを非表示/違反報告)
功徳(プロフ) - ？？？さん» ありがとうございます！よかったです！嫁との仲直り（気色悪い隠語）はさぞかし優しくて愛情を感じるものになったと思ってます（でも結局夢主が最終的に結婚を認める形式で浮気を最初に許容したのが悪い） (5月29日 17時) (レス) @page50 id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
？？？ - 初コメ失礼します。作者様の作品に一目惚れし、バットエンドやシリアスが好きになった者です。最後の最後にデュースが爆弾をぶっ込んで来て、頭を抱えていても立ってもいられなくなりコメントしました。作者様の書く小説が大好きです。失礼しました。 (5月28日 23時) (レス) @page50 id: fb57b657b4 (このIDを非表示/違反報告)
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