私の彼氏は気分屋すぎて困ります。【短編集】＊drei

風邪【彼氏編】 ページ10

「おい知ってるか−？あの仁が風邪引いたらしいぞ」


朝、教室に入ってくると大輝がニヤニヤ笑いを浮かべながら、その言葉と共に近づいてきた。


「…えッ、はい？」


私はそれに対し、間抜けた声で返事をすることしか出来なかった。


今なんとおっしゃいました？あの仁が、風邪？聞き間違いじゃなかったらそんなことが聞こえた気がするけど。


あの仁様が風邪を引いた…だとぅ？！


「へーあの仁が？Aの飼い主の仁が風邪引いたって？珍しい〜明日吹雪になるんじゃない？ あ、A、おっはよ〜」


遅すぎる挨拶と、悪態をつく雅。


…いや、ちょっと待て。おはようの前にいま聞き捨てならない言葉があったぞオイ。


「いや、私ペットじゃないからね？！違うからね？！人権大事にしようね？！」


必死に訴えると、彼らは何やら冷めた目線を送ってきた。


「…うん、Aが人なことくらいは知ってる。けど」


「態度見てたらありゃ、ペットと言わざるをえねぇだろ」


息ぴったりの雅と大輝。そんな彼らに私は何も言えない。


…とにかく、話題を変えて。


「…で、大輝。なんであんたがそんなこと知ってるの？」


今は殆どの生徒が登校してくる時刻。勿論ＨＲ前。だから、そのことを知る人間は少ないのだ。私だって今初めて知ったし。


「ん？メール来たんだよ、さっきお前が来るちょっと前」


ポケットからスマホを取り出した彼は、素早く画面を操作。


目的のものが出てきたのか、指を止めるとこちらに画面をよこした。


「ほらよ」


『大輝へ。 スマン、風邪引いちまったみたいなんで今日は休みまーす。』


「あ、本当だ。仁大丈夫かなー」


それを覗き込んだ雅が呟いた。しかも棒読みで。


「心配だね。…ていうか雅、アンタ全く心配してないっしょ」

＊
彼氏編と記載しましたが、別バージョンがあるかどうかは未定です。

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