手の平で転がされすぎてる【江戸川乱歩】

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後ろに隠した手紙をぶんどって細目で内容を読んでいく。
少しも経たないうちに、へぇ、と云って手紙を返してきた。
只今乱歩さんはとんでもなく不機嫌である。


「愛なんてない。微塵もない。だから駄目！」
『…はい？』

「わかったこうしよう！僕がこの男の身辺調査をしてやる。それで終わり。お見合いは破談」
『いやいやいや、それ絶対良くないとこだけ持ってきますよね？！大丈夫ですから！破談じゃないし！』


「はああ？君と話す事はおろか、会った事もないやつが良い訳？どうせ君の事もよくわかってないと思うけど？」
『よくわかってないからお見合いするんでしょ！』


段々とヒートアップする乱歩さんを与謝野女医が窘めようと声をかけるも、耳に入っていないようでグチグチと私に文句をぶちまけてくる。

「僕は君の事なんでもわかる。」
『それは、名探偵ですもんね』
「僕の方が君と長く居るけど？」


『仕事一緒ですもんねぇ…何がそんなに気に食わないんですか？』
「Aがこんなうっすい男に興味持って、僕よりそっち取ろうとしてる事」

『うっすいて…まぁでも誠実そうな人じゃないですか。会うだけ会ってみたいな…なんて』
「ふぅん。そういう人がいいの？嗚呼そう」




名探偵はひたすらに駄々を捏ねてから、何かを考え始めた。こういう時は決まって悪巧みだったり私で遊ぶ時だから嫌な汗が流れる。

お願いだから、私の婚期を邪魔しないで。





＊





取り敢えず連絡先を追加して相手の男性に一報入れると、それはまた凄い熱量の文章が返ってきた。
一つ一つ丁寧に読み上げていると、なんと、お見合いをやる方向で話が進んでしまっていた。



『ど、どうしよう！！お見合いやる事になっちゃいました！』
「おめでとうAちゃん」
「良かったじゃないか」


『……余計な反応すると乱歩さんの気に触るからって…みんな塩対応…』




ボソリと呟いたら太宰さんに何か？という顔をされたので慌てて口を抑える。
御相手の男性は随分と丁寧な口調で、物腰柔らかそうな人だ。家に良い服あったかな





「…お返事有難う御座います。1週間後…ふぅん」
『っわ！乱歩さん、びっくりした』

「僕もお見合いって行っちゃ駄目なの？」
『行けませんよ流石に、諦め悪いですよ？』
「…生意気」


先程よりかは幾分か落ち着いた様子の乱歩さんは私の後ろから顔を出して、携帯を覗いていた。

ついには、僕が返信しようか、なんて云い出したので強くお断りしておいた。

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