【文スト】自刃しようとしたら路地裏にいて幼女趣味に捕まったんだが

「赤い月と鮮血の瞳は、同じような色をしていた。」 ページ34

太宰said


不意に目を覚ました。


腕のなかに抱いていた彼女がいない。



部屋の暗さから真夜中だ。

一体何処へ――――

そう思っていたら、歌が聞こえてきた。



窓が空いている。


その先は、空中じゃない。




地面だった。


その先から歌は響いてくる。




太宰「白...?」

三味線や笛、太鼓の音も聞こえる。



思いきって、窓を出る。



森の中のようだ。



空は赤い月だった。


波の音が聞こえる。





彼女の異能力だろう。
何かを代償に何処かへ繋いでいる。



奥へ行くほど、歌がはっきり聞こえてくる。



――貴方と そんな夢を見れたなら

　 貴方の願いを全部全部 叶えてあげれたら



森の果ての岬に立って、海の上の空に浮かぶ赤い月へ
歌を歌っていた。

しかし、様子が違う。


あれは、昔の着物だ。

水干、と云うのだろうか。黒い昔の着物を着ていた。
黒い一枚下駄を履いて。


髪も巫女のように白い紐で縛っている。長い髪が足首までさらに伸びていて風に靡く度にきらきらと光る。


太宰「白っ!!」

彼女が彼女で無くなる気がした。

振り返った彼女は





鮮血の瞳を鈍く光らせていた。



目尻に紅が引いてある。


そして、額にある









二本の角。






異能力の最終段階。



そんな言葉が過る。


中也の汚濁と同じ――


次の瞬間、彼女を抱き締めた。


太宰「何をやっていたのかは聞かない。でもこれ以上は駄目だよ。」


『.....ｱ...』


回りの景色が変わる。

気がついたら寝台の上に戻ってきていた。


太宰「...白?」

異能力は解いた筈なのに、息が荒い彼女。

『....御免、赦してよ.....太宰治。』

太宰「えっ...っ!!!」

口調が違う彼女が赦しを乞うた思うと、私の肩に手を置いて頸に噛みついてくる。


軽く歯が食い込む。
包帯はいつの間にか解かれていく。


血が流れた感覚があって、彼女はそれを舐め取っていく。

噛んだところを舐められて、痛みが走る。

太宰「いっ....!!!」

押し退けようにも凄い力で手首を捕まれている。


ある程度舐められただろうか。
傷口が塞がっていた。



『御免。赦してよ。』


彼女が肩に頭を乗せてきた。



『寂しかったんだ。月夜の夢を見ていたかったんだ。』


そんな言葉を淡々と吐き出していく。





『だから...御免。こんなことして、御免。』


私の頸の傷を撫でた彼女はそのまま寝てしまう。


くっきりと残ったその跡。


彼女の言葉。



さっきの場所。




彼女は私にも見抜けない


何かを抱えて隠している。






しっかりと離さないように。

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