二話 ページ9
それから13年経ち──1879年。私たちはダラムに移り住み、そこでそれぞれ仕事をしている
私はウィルと同じ学校の美術の先生だ。とは言っても美術と数学、だいぶ会う時間は少ない。
授業用の書類などを持って運んでいると、ウィルの声が聞こえる。きっと数学中なのだろうか？ 少し耳を澄ませる。
「──本当に温かいご家庭だったんですね。……まるで絵に描いたような理想の家族だ──」
……過去の、話でもしたのだろうか？ 理想の家族、と言っていたが……。実際絵に描いたようなものだから、あたりまえだろう。
「……数学の講義に戻りますよ」
ウィルの声で我に戻る。そう言えば授業中だった……。
──きっとこれでこの国を変えられる。
とある日。私たちは引越しをした。ウィルが出かけているうちに3人で片付けをする。あらかた終わったところで、ウィルが丁度帰ってきた。
「おかえりウィリアム。粗方片付いたところだよ。ルイスとAも頑張ってくれた」
「……元々そんなに汚れてなかったですから……」
「アルバート兄さん厳しかった……」
家族団欒のひととき。夕食の準備に取り掛かろうとした時、外を歩く男の人が見える。
「はじめまして。本日こちらに越してきました、モリアーティと申します」
「……どうもよろしく、貴族サマ」
ウィルがあいさつをするが、男の人はあまりよく思っていないようだ。……この町も、貴族に支配されているのか──
ダラム大学へ、2人で歩いていく。初めて通る道、初めて見る人々。
「……みろよ、貴族様が歩いてるぜ」
貴族のことをよく思っていない人々が私たちを見て笑う。
「没落貴族の類なんじゃねぇの？ こんなド田舎の物件買うなんてさ」
「よっぽど売れなくて不動産屋が大安売りしたんだろ、はははっ」
その声を聞き、ウィルが急に方向を変えその男たちの元へいく。そして、音を立てて机を叩く。怒られる。そう思った男たちには焦りの表情が見えていた。
「おはようございます、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティです」
正直驚きつつも、私も挨拶をする。
「……おはようございます、A、です」
……男たちはウィルの話すことに吃驚している様だ。それもそうだ、なにせ値切りをして屋敷を手に入れたと話されたのだから。
「……アンタ本当に貴族なのか？」
「確かに貴族として生を受けた人間は神であるかの様に振る舞うものが多いですから。ああはなりたくないものです」
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わむ - 完結？ (2021年4月23日 19時) (
レス) id: 6836c6202c (このIDを非表示/違反報告)
黒こげスコーン(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます！ 今週土日には更新再開出来そうなので、頑張っていきます！ よろしくお願いしますね〜m(_ _)m (2019年7月11日 19時) (レス) id: 508af40629 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 面白くて一気によんでしまいました。受験勉強、大変でしょうが頑張ってくださいね。応援しております。 (2019年7月11日 9時) (レス) id: 1d9170a06b (このIDを非表示/違反報告)
黒こげスコーン(プロフ) - りとのおへやさん» コメントありがとうございます〜！！ もうそろそろ更新再開できそうなのでこれからもよろしくお願いします(｀･ω･´) (2019年7月5日 21時) (レス) id: 508af40629 (このIDを非表示/違反報告)
りとのおへや(プロフ) - 更新頑張ってください！ウィリアム大好きなんですよ！だからこの作品に出逢えたことに感謝です！めちゃめちゃ面白いです！ (2019年7月5日 21時) (レス) id: 534e38ce7a (このIDを非表示/違反報告)
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