罪には罰を。 (ページ11)

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「──わざわざ歓迎の宴の席を設けて頂いてありがとうございます、ダブリン男爵」
夜、ダブリン男爵の屋敷でパーティを行う。ダラムを治めるもの同士仲良くしようという話らしい。
アルバート兄さんがワインを進めるも、男爵は心臓が弱いらしく医者に酒をとめられている様だった。

アルバート兄さんはそのまま私たちの紹介をした。ウィルの副業が私立相談役だと話すと、直ぐに男爵が相談を始めた。
15年前に妻に先立たれ、現在領地と財産の相続人が居ないらしい。そこで妻の親戚を探して欲しい、という内容だった。

｢申し訳ありませんが……人探しでしたらどちらかの探偵事務所にご依頼なされた方が余程早くて確実かと｣
ウィルは困ったような笑顔でそう告げた。その助言を受け、そうしてみようという男爵。

｢……領地と言えば、男爵｣
ふと、その相談の中にあった『領地』について問いかけるウィル。
｢……ああ、そういえばこの町の人々は相当な額の地代を納めていましたね……｣
私も思い出し、そう呟く。
｢我々貴族の主な収入源ですからな｣
そして当たり前のように男爵は言った。
｢この生活を維持するためには致し方ないでしょう。彼らは言わば我が国の家畜なのですから｣

……あの男爵め、いいやがった。
すぐにでも殴りかかりたかったが、作戦のために我慢する。
アルバート兄さんは鋭い目で一瞬睨みつける。そして何食わぬ顔でこう言った。
｢我が家はこの通り兄弟4人だけ。あなたと違い身軽なものです。
……ですから、うちの地代をぐっと下げようかと｣

男爵は驚き、それはいけないと立ち上がる。
｢そんなことをされてはこちらの領内に農地を持つものが黙ってはいないっ！世の中は何事もバランスが大事なのですから！｣
｢……そう仰るのでしたら尚のことです。我々が贅沢をしている間にも町のものは困窮し金策に走る。これはアンバランスではありませんか？｣
慌てふためく男爵に、静かにウィルは言い放つ。

｢……そうですね。階級制度に慢心していると、いつか家畜に食われてしまいますよ、男爵｣
私もそう言い、私達は食事も途中だがダブリン男爵の屋敷を出た。

悔しそうに、走る馬車を眺めるダブリン男爵。
｢貴族が下民に喰われるだと？我々は国と法によってしっかりと護られておるではないか、馬鹿馬鹿しいっ｣
そう吐き捨てて、彼は屋敷に戻って行った。……終わりが近いことも知らずに。