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「じゃ、あたしはこれで」


そう言って降りようと立つAだったが、一緒に立ち上がった銀時を見て頭に「?」を浮かべる。
銀時はなんでもないような様子で「なにぼさっとしてんだ。降りるぞ」とAの手を引いた。

改札に向かう道で戸惑いながら尋ねる。


「何してんの。かぶき町はもう少し先だよ」

「送ってく。もう暗ェだろ」

「え、いいよ悪いし」

「遠慮すんな。最近はなんかアレだろ。物騒なんだろ」

「なんだそのふわっとした感じ……まぁいいや。じゃあお願いしようかな」


改札を出て中島画塾への道を歩き始める。
夜の街であるかぶき町とは違い夜営業が主な店が少ないため、かなり道が暗い。
その様子を見て、やはり送って正解だったと銀時は胸の内で思う。女性扱いすると、謎に茶化されることがもう分かっているので、口には出さないが。

なんとなくだがずっと手を繋ぎっぱなしだった。
それについてAは何も触れることはしない。
長きにわたる異性との集団生活の中で距離感がバグっているんだろう、と銀時は自分を納得させる。そうなるといままで彼女が無事でいられたのは師匠である一二三の力が大きいのだろう、とも。

そんなことを心の内で悶々と考えている間に、気が付けば中島画塾の門の前まで来ていた。

実際にそれを目にするのは銀時は初めてだが、その門構えと塀の長さからそれがかなり立派な屋敷であることが分かる。開かれた門からは美しい庭園が覗けた。


「絵描きの弟子ってのはこんなに立派なところに住めるのか」

「画塾兼師匠の家だからね。ありがとう。それじゃあまた。あ、格安での依頼についてはまた追々連絡するね」


微笑みながら言うAに「覚えてやがったか」と頭を掻いた。


「あたりまえじゃん。なんで自分の得になること忘れる……アレ、師匠」


門の向こう側にいつの間にか一二三がいた。黒い服を纏ったその巨体は夜に紛れており、Aが気付くまで銀時でも気が付けなかった。

一二三は非常にめんどくさそうに口を開く。


「もう10時になるから戸締りに来てみれば……」

「なんで師匠が戸締りしてんの?今日の当番あたしなんだけど」

「お前が帰ってくるのが遅いからだろう……!!」


Aはケロっとしているがそう歯を食いしばりながら言う一二三にはなかなか迫力がある。
銀時はもう逃げ帰りたい気持ちでいっぱいだった。


「だいたい、話をこんなところでするな。近所迷惑だろう」


その一二三の言葉で、銀時は水を得た魚のように「そうっすよね〜〜!!いやあすんませんホント!じゃ、俺は帰りますね〜〜!!」と声を裏返す。

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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/  
作成日時:2020年10月10日 22時

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