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後日、酷い土砂降りのある日。
こっそり万事屋まで来た秋彦は銀時と依頼料についての相談をした。
そのついでに秋彦自身が知る限りのAの普段の行動範囲やバイト先、友好関係などを記した資料もおいて行った。
秋彦が万事屋を出た後、その資料を眺めていた銀時はあることに気がつく。
「里親のためにバイトしてんのか、アイツ」
初めに甘味処でバイトをしていると聞いたときは画家で弟子入りしている状態で?と疑問を持ったが、理由を見て納得した。
病気の里親の治療費のために彼女はアルバイトをしているのだそうだ。
大きな問題がおこって精神的に追い詰められるとすればおそらくこの里親関連なのだろうが、里親は療養のために空気の良い地方で住んでいるようなので、探りは入れづらい。田舎の噂の速さを舐めていると痛い目にあう。
人間関係については弟子たちとバイト先と、あとは中島一二三繋がりの画家やその関係者が少数ほどだ。この中ならまず探るならバイト先だろう。
Aのだいたいのシフトも資料の中には含まれていたので、入っていない日に怪しまれない程度に店員や店主に聞いてみるしかなさそうだ。
「銀さん……本当にやるんですか」
不安げな目をした、同じく資料に目を通していた新八がそう尋ねる。
銀時は視線を資料から動かさない。
「こんなこと、多分Aさんは嫌だと思いますよ」
「それでもやるんだよ。俺達はなんでも屋だ。それに、興味本位で知りたがってるわけじゃなかっただろ」
「違います!!僕は銀さんがそれでいいのかって言ってるんです!!」
新八の声に銀時はようやく資料から視線をあげる。
「新八、やりたくないことを避けるようなことをしていちゃ仕事なんてできねーよ」
瞳は確かに新八を向いていたが、その言葉がどこに向いていたのかは分からない。
新八にも、銀時自身にすらも。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2020年10月10日 22時