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そんな銀髪の様子を見て、お登勢は呆れたようにため息をついた。
「何言ってんだい銀時。中島って言ったら江戸一番の絵描きの中島一二三(ひふみ)のことじゃないか。そうかい、あそこの門下生だったのかい」
「へー。じゃあ何。アンタ絵上手いのか」
「あたりまえでしょ。あたし天才だもの。あたしより上手い人なんていないよ」
あぁ、かわいそうな子か。銀時はそう確信した。路地裏での会話の雰囲気からまともでは無さそうであったけど。
顔に出ていたのか「何か文句でも」と眉を顰められる。
「で、何でその天才があんなところで転がってたの」
「師匠と喧嘩したから」
「何でまた。あ、方向性の違いってやつ?」
「なんでそんなちょっとプライド拗らせたバンドみたいな理由で喧嘩しないといけないの。き●この山とたけ●この里どっちが美味しいかで喧嘩したんだよ」
「クッソくだらねェじゃねーか!!!方向性のがマシだろ!!」
「そんなことない!!だって師匠、たけ●この里しか買ってこないんだもの!!あたしはきのこの山のが好きだって言ってるのに!!」
腕を目いっぱいに広げてそう主張する女に銀時はようやく先程彼女が自身の足を掴みながら言った言葉の意味を理解する。
「……だから『たけ●この里でもいいから』……か」
「は、なにそれ」
「アンタ、さっき気失ってた時、俺にたけ●この里でもいいから食いモンよこせって言ってきたの」
「え!?何それ知らない!!」
きのこ派としてあるまじき失態!!と頭を抱える女のもとに、お登勢が完成した料理を持ってきた。山盛りの白いご飯と、大量のおかず。
「ハイよ。待たせたね」
「わぁ〜〜っ!!!こんなにたくさん!!良いの!?」
「もちろんだよ。銀時につけとくからね」
「オイまじかよ」
なんだか私の知らないところで被害者が出ているようだがそんなことは自身の空腹に比べれば些細な問題だった。女は全力でご飯をかき込む。
「うま〜〜」
「ハハ、急いで食ってても食べ方は綺麗だね。どっかの三人とは大違いだよ」
「うるせーよ」
銀時は悪態一つついてから、女の方へ視線を戻した。
「で、アンタこれからどうするんだ?」
「んー。どうしよ」
食べ物を飲み込みつつ首を傾げる彼女。銀時はその様子に呆れたように眉をしかめた。
「師匠のとこ帰んなくても良いのかっつってんの。弟子なんだろ」
「あーハイハイそういうことね」
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2020年10月10日 22時