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その後場所を移動した二人は、もう他の同業者の姿が全くない場所にまで来ていた。
あのままあの競争率の高い場所で頑張るよりかは一発逆転を狙うべきだと二人は燃えていた。
そんなときだった。
「あ〜!!猫だ〜!!かわいい〜おいで〜!!」
そんな女性の明るい声が聞こえてきたのは。
「銀さん!!もしかして!!」
「あぁ!!」
希望を見た二人は同時に走り出した。
声はすぐそこの角の向こうから聞こえてきた。二人は慌てて駆けだす。角を曲がったそこには―――
「あ!!お前ッあの時の!!」
その先にいた人物に銀時は思わずそう叫ぶ。
白い猫を抱いたその影は振り返った。
「あ、タケノコのスパイ」
それは、昨日助けたあの女だった。
***
「あ〜!!猫だ〜!!かわいい〜おいで〜!!」
子供のような姉弟子の声に、秋彦はうんざりした。
自分と1つ2つしか歳の変わらないこの姉弟子は、日に日に幼さが増しているように思えるのは気のせいだろうか。出会った頃はこんなでは無かったのに。
「早く帰ろうぜ。肉とか傷むだろ」とレジ袋を揺らしてみても彼女はもう自分の持っていた袋を地面に下して猫を抱きかかえている。
「人懐っこいね〜」
「飼い猫だろ。首輪ついてる」
「本当だ。かわいい首輪。毛並みも綺麗だし大事にされてんだろうね。迷子かな」
そんなことを話していると、慌ただしい足音と共に男の叫び声が響いた。
「お前ッあのときの!!」
Aがそちらを見ると、そこには銀髪のもじゃもじゃを頭に乗せた男が立っていた。なんだあれは。
そうだ、あれは、確か。
「あ、タケノコのスパイ」
「いや何でだァァァ!!」
銀髪の元気なツッコミが入った。
Aは少し驚いてから「テンション高すぎない?元気だね」と引き気味に笑った。
「いやツッコませたのお前だから!!何俺が一人で盛り上がってるみたいにしてくれてんのお前のせいだから!!!」
「ちょっと、うるさい。猫がビビってるでしょーが」
恩人であるはずの己へのあまりの認識の酷さに、猫発見の興奮も相まって銀時はそれはもう混乱していた。こんなナチュラルな無礼を昨日までほぼ初対面だった、それも命を助けた相手にされるだなんて誰が予想できようか。
そんな銀時を気にも留めず、Aは胸元に怯えながら縋りつく猫に「かわいそうにねぇ」と声をかけている。その隣にいる秋彦も「お前本当に動物に好かれるよなァ」と銀時を気にかける様子がまるでない。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2020年10月10日 22時