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その日はゴミの日だった。燃えるゴミの日。週に2回あるうちの貴重な1回だ。
坂田銀時は重たい身体を無理矢理起こして立ち上がった。
今日を逃すわけにはいかないのだ。前回も前々回も従業員である志村新八が出勤するまで寝こけていたため、今、燃えるゴミ用ゴミ箱はパンク寸前だ。
「ふぁ〜、ねみぃ」
パツンパツンのゴミ袋を縛って持ち上げてみるとこれまた相当な重さだった。
時刻は朝の8時前。通勤通学ラッシュの時間とはいえ、ここは夜の街かぶき町。人通りはまだ疎らだ。
銀時は寝起き姿のまま地域のゴミ捨て場まで重い足をひきずりながらやってくるなり、適当に袋を投げ捨てた。
さて、やることはやったし新八が来るまでもうひと眠りするか、と事務所兼自宅へと向かう。
その途中だった。それが目に入ったのは。
「……?なんだ?アレ」
彼の事務所の入っている建物と、その隣の建物の間にある路地裏に、なにやら大きなものが落ちている。
それが人間であることを理解するまでに、そう時間はかからなかった。
地味な色合いの袴を着ていて、髪の毛を雑に一つにまとめている。うつ伏せで寝ているせいで、それが華奢な男なのか見た目に無頓着な女なのかはその状態では判断がつかなかった。
―――酔っ払いか。
銀時は自分の中でそう結論づけた。この街ではよくあることだ。
歓楽街であるここで、こういったことは珍しくない。
でもまあ、さすがにこの状態で放置しておくのは気が引けた。
「オイ、大丈夫か、アンタ」
「うー…ん」
軽く揺すってみたところ、唸るような声を出しただけで、それは自力で動く気が全く無さそうだった。
「こんなとこで寝てっと踏まれんぞ」
「……」
今度は少し強めに揺すってみたが反応はほぼ変わらない。
……諦めるか。眠いし。
酔いつぶれてこんなことになっているのなんてそもそも自業自得なのだ。俺に助けてやる義理は無い。
そう思って踵を返そうとした、その時だった。
――――ガシッ
足首を掴まれた。肉どころか骨にまで指が食い込みそうな強さで。
「え、痛い痛い痛い。何コレ」
「あのッ!ご飯!!ご飯を持っていらっしゃいませんか!?お腹が空いて力が出ないんです!!!神様!!」
先程までほぼ無反応だった人間が、銀時の足を掴んだまま逃がすまいとそう大声で喚きたてた。
「え!?神!?てか出てんだろ力!!十分出てるだろ!!ミシミシ言ってるから俺の足!!」
「もう何でも良いから!!タケ●コの里でも良いから!!」
「何でそのチョコ菓子!?」
その言葉を最後にソレは再びパタリと倒れ、動かなくなった。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2020年10月10日 22時