その背中に触れたい【虎杖悠仁】

18.秘めた思い ページ20

『ごめ、っ、すぐ、どうにかするから
ちょっと今は、涙止まんな……』



悠仁から一歩離れて
あふれる涙を拭う
でも拭っても拭っても涙は止まらない



「A、Aこっちみて」



悠仁は私の忙しない両手を握って
まっすぐ私を見つめた



『うぅ、見えないよ〜』


ちゃんと悠仁の顔を見たいのに
視界はぼやけっぱなしで
頬も濡れたままだ


「もう泣くなよ」


悠仁は私の濡れた頬を
無骨な手で優しく撫でる


「ほんとごめん、A。
俺はここにいるよ。」


そう言って握った私の手を
自分の顔へと持っていく

私の左手が悠仁の右頬に触れた




その途端胸がぎゅーーっとして
もう手放したくないと
強く、強く思った


悠仁のいない世界を生きるくらいなら
死んだ方がずっとましだった









そして、場所を移動し
学校別にミーティングを始める



「東堂は確実に直で
私たちを潰しにくる
真依も私狙いで便乗してくるかもな」



みんな円のような形になり
真希さんの話に耳を傾けた


「東堂は化け物だ
全員相手して全滅するのが最悪のパターン

だから足止めとして一人だけ
パンダか恵を置いてくつもりだったが…

虎杖、お前に任せる」


東堂の足止め役に悠仁が抜擢される

百鬼夜行の話を聞くだけでも
東堂がどれだけ桁違いな強さかはわかっているから
悠仁が心配ではあるけど




「でも先輩
やるからには

勝つよ、俺」



きっと大丈夫だ







(かっこいいな…)



そう言い切る勇姿に
心がくすぐられ揺れ動いてしまう


けど今は
悠仁の姿が目に映るだけで
油断したら視界がぼやけてしまいそうで

私は作戦会議の片隅で
涙がこぼれ落ちないよう努めていた









伏黒side



杜若の瞳が、ずっと涙で濡れている


「杜若、大丈夫か」


ミーティングが終わった後
斜め前にいるそいつに声をかけると
振り向いたその目は赤い


『うん！大丈夫
気合い入れなきゃね！』


そう言って自分の顔を
両手で強く叩いた




自分にとって大切な存在が
もう帰ってこないと思ったら帰ってきた

泣いて当たり前だ




虎杖が死んだ次の日
隣の部屋から物音がして
少し開いたドアの隙間から中を覗くと
杜若の震える背中があった




「そうだな」




叩いて赤くなった杜若の頬を見て
内心で俺も気合を入れ直した

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