【ヒロアカ】緋色の君はいつも、2 (ページ13)

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13.大切だからページ13

『……っ』

胸が締め付けられるように苦しい

私はこの優しさに甘えちゃダメなんだ

けどこの温かい手を振り払いたくない
傷つけたくない

でも今私は、私のわがままを通せる立場じゃない
しっかりしなきゃ

『鋭ちゃん

手、離して…？』

「え？」

少し驚いた顔でこちらに振り返る

『離して欲しいの』

「あ、わ、わりい」

鋭ちゃん傷ついた顔してる…

本当にごめん
ごめんなさい

でも言うなら今だ

私は痛む胸を無視して、一つ一つ言葉を絞るように出す

『鋭ちゃん、あのね
ずっと言えなかったことが、あるんだけど

鋭ちゃんは、私に告白してくれた時
返事が欲しいわけじゃない
って、言ったけど…

やっぱり私のこと
諦めて欲しい…』

「な、んで…？」

俯く私の視界に映る鋭ちゃんの手が
僅かに震えていた

『私が相澤先生を好きな気持ちは

きっとこれから先変わらないと思うから』

「…そんなのわかんねーよ」

『わかるよ』

「わかんねーよ…！」

苦しいのは鋭ちゃんの方

わかってる

けど、私も苦しい…

『鋭ちゃんの優しさをこんなところで無駄遣いして欲しくない。』

「無駄遣いなんかじゃねえし、優しさでもねえ。
俺が勝手にAちゃんに惚れてんだ

それもダメなのか…？」

『鋭ちゃん、』

そんな目で見ないで

『…だって、私にとって鋭ちゃんは大事な
友達、だから…
私のせいで苦しい思いをしてるのを見てるのは、辛い…』

鋭ちゃんがぐっと手を握りしめる

「…Aちゃんのせいなんかじゃねえよ

それに、そう言われて

簡単に諦められるほどの気持ちなら
最初からAちゃんに告白してねえ…！」

泣きそうな顔で訴える

ズキン

胸をナイフで貫かれたみたいに痛い

「…それに、苦しい思いしてんのはAちゃんもだろ？」

『え？』

「先生を好きになるなんて、苦しいだろ…」

『そんな、こと…』

突然私の話になるなんて思いもしなかったから
不意をつかれた

返す言葉が見つからないでいると
鋭ちゃんは私をまっすぐ見据えてこう言った

「…だから俺は諦めねえ

想ってるだけでいいなんて
もうそんな虫のいいこと言わねー

Aちゃんの心奪って

俺がAちゃんを幸せにするんだ。」

『えいちゃ…』

それほど私を好きでいてくれてることが

苦しいのと
申し訳ないのと
恥ずかしいのと
少し嬉しいのとで

色々ぐちゃぐちゃになって

私はもう、何も言えなかった