ころんに”ばか”って言われたい。

知らんぷり ページ14

あーあ。なんだか今日は気力がない。

椅子から立つ元気もない。

友達から大丈夫かと心配されるぐらいには元気がない。

そんな気持ちが表情に出ていたらしい。


「どうしたー大丈夫かー」


ころんが私の顔を覗いて手を振っているが、焦点が合わず上手くころんの表情が見えない。

完全にボーっとしてる。動きたいのに動けない。

「もー無視してんじゃねーよ」

おでこにころんの綺麗な手が当たり、息を吸う間もなくデコピンされた。

痛い。

「あ、やっとこっち見た」

ようやく焦点が合い見えたころんの表情は、いつものおちゃらけた顔。

なんだか安心する。顔を見ただけなのに。

『ごめん、なんかボーっとしてた』

「いいけどさ。てかAがごめんって言うなんて夜雷くるんじゃね」

しばいたろか、と言いかけたが上手く声が出なかった。

そんなツッコミを入れる力も残ってないなんて重症だ。

早く家に帰って塾の予習でもしよう。

「えーちょっ待ってよ」

ころんの慌てた声が聞こえるが、とりあえず無視。

こんなうるさいヤツに構っている程、私に元気があると思うか。

『今日なんか元気出ないから先帰るね。ちゃんと進路調査票書くんだよ。あと今日から始まるゲームのイベントの為に徹夜でゲームしないでね。テストの勉強しときなよ』

言いたいことは全部言ってやった。

足取りの重さに耐えながらゆっくりと足を踏み出した。

「は？お前に言われる筋合いねーよ！あと体調悪いなら家送るから」

そこまで言ったころんはキュッと口を閉じた。

私の表情を見たからだろう。明らかに動揺してる。

私は家に来るな家に来るなと、鋭い視線をころんに送った。

今家に来て欲しくない。たとえまあ信頼出来るころんであっても。誰でも。

「ん、わかったよ。何があったかしらねーけど、無理はすんなよ。さっき生徒会で色々と動いたばっかりだろ？あとちゃんと歯磨きしてしっかり寝ろよ。塾なんかに翻弄されんなよ！」

『へへ....わかってるよ』

乾いた笑みを見せたが、心の中ではハテナが沢山まとわりついていた。

ころんのいつもは無い溢れ出る優しさは一体なんなんだ？

分からない、ただただ怖い。

だけどとても嬉しい。

「帰ったらいつでも連絡しろよ」

『わかってるって、全部。何年の付き合いだと思ってんの』

「確かにな」

ころんはハハッと笑みを見せてくる。

ねえ、これじゃあただの爽やかなカッコイイ好青年じゃん。

いや、昔からそうだっけ。

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