【ωrωrd!】童話を抜けた先【短編集】 (ページ9)

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「ぼくのもんになる気になった？」
「……はい」

満足気に頷いて手を差し出される。その手を取れば、転びそうになってしまう勢いで腕を引かれた。

「う、わっ」
「ぼくの部屋行こか。星に帰るまではお前の部屋でもあるけど」

歩を緩めてくれる気配は一切なく、かと言って手を離してくれる様子もないので、小走りで必死に歩幅を合わせて転ばないようにする。通りすがりに見かけた、やはり人間と同じ姿をした生き物は私たちを奇怪なものを見るような視線を向けた。
やっと部屋についたかと思えば、今度は雑に放り投げるように押し込まれる。もう既にこの選択が正しかったのか分からなくなってきた。
意味の分からない機械や恐らく家具らしいものが置かれた部屋の隅で縮こまる私と、部屋の主らしく悠々自適に過ごしている彼。
こちらに友好的かは少々疑問が残るが、少なくとも敵意はなさそうだ。おずおずと、ずっと気になっていたことを伺う。

「私のなにがよかったんですか……」
「別に？かわいいな思っただけやけど」

そっちで言う捨て猫拾うみたいなもんやろ、なんもおかしな話やなくない？
どれだけ似たような姿かたちをしていても、それは人間ではないのだ。私は人間のことを猫のように見たことなどなかったし、愛玩動物として見たこともなかった。同じ種族なのだから当たり前だ。

「むしろそれ以外にある？」
「え、あ、好きなのかと、思って……」
「好き？それは生殖本能を伴った感情のこと？」
「まあ、あの、はい」

間違ってはいないけれど、言い方がなんだか生々しくて嫌だ。それにこちらが勘違いしていたのも相まって恥ずかしい。
彼は心底どうでも良さそうに私を一瞥し口を開いた。

「どれだけ見た目そっくりでも種族ちゃうしなあ……まあ、その気になったらぼくと同じにしちゃえばええ話やし、今は気にせんでええよ」

ああ神様。もしかして、内臓や血を抜かれて地球に返された方が私は幸せだったのだろうか。