きゃとられみゅーてぃれーしょん！/ut ページ8
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キャトられた。いや、もっと分かりやすい言葉を使おう。誘拐された。
ああ、私も家畜のように血や内臓だけを抜かれて地球に返されるのだろうか。見える未来はどれも悲惨なものばかり。遠くなっていく青い地球が恋しくて、窓にへばりつく勢いで眺めていた。
「そんな見ててもお家には返さへんよ？」
肩に手を乗せて、なんとも穏やかな声色で話しかけてきたのは私を誘拐した張本人。容姿だけはどこからどう見ても人間で、馴染んでいるのか方言まで話している。
「わたし殺されるんですか……」
「ん？ あーまあ、あんま言うこと聞かへんかったら？」
この人(ヒトではないが)はする。ここに連れてこられるまでに、いま私が乗っている宇宙船で街一つ焼け野原にしたのを見たのだ。いや嘘をついた。あれは多分市一つは更地になっている。
「かわいそうなお嬢ちゃんに、優しいぼくが選択肢をあげるわ」
彼は指をピッと二本立て、ずいと私の眼前に押し付けた。
「一つ目、地球と戦争する。二つ目、ぼくのものになる。好きな方選んでええよ。ぼくはどっちでも困らんから」
なんとも軽い声で地球の命運を託された。まるで日常で当たり前に発生する、どうでもいいような選択肢を提示するかのようだった。ドッと冷や汗が垂れる。私の返答一つで、故郷が滅ぶのだ。そんなの、選択肢などあってないようなものではないか。
「衣食住くらいは保証したるよ？ 捕虜でもなんでもなく、ぼくの愛玩動物やし。それなりにかわいがったるし」
「ペットみたいな……？」
「んー、まあ、そうとも言う」
これ以上地球に害が加えられず、私も酷い扱いを受けないのであれば受け入れるのがきっと最善なのだろう。「どう？」と分かりきっている答えを待っている彼は非常に機嫌が良さそうだ。
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作者名：脳内お花畑
| 作成日時：2024年1月19日 19時
