君に捧げるカンタレラ2 ページ2
「んっんー。つっかれたー!」
支配人に頼まれていた劇団の過去の演劇映像を記録したDVDを整理していたAが一区切りつき伸びをして凝った筋肉を緩和させる。資料整理が苦手なのか面倒臭くてほったらかしにしていただけなのか初めて足を踏み入れた少々埃っぽい資料室は散らかっていた。AがMAHKAIカンパニーにバイトとして雇われたのは春の終わり、春組の公演が千秋楽を迎え再び世間にその名を知られ始めた頃だ。
「もうお昼か、残りは昼ご飯食べてからにしよっかな。あっそうだ支配人に昔のフライヤーどうすればいいのか聞かないと」
時計に目をやり慌てて立ち上がればポニーテールが揺れる。万里がMAHKAIカンパニーに入団する事が決まった時は心臓が飛び出るんじゃないかという程驚いた。万里のライバルである兵頭十座や借金取りの左京を加え秋組は旗を上げた。
「Aちゃん、今お昼?」
「あっはい。皆木さんも今からお昼ですか?」
「うん、レポートの区切りついたから」
「大変ですね。今日のお昼は監督さん特製キーマカレーですよ〜」
昨夜いづみが嬉々として団員達に振る舞った監督特製キーマカレー。その残りを各々好きな時間に食べ綴とAは最後の方だったのかあまり残っておらず綴の分を多く掬おうとした手をやんわり止められる。
「コラコラAちゃん、俺に気遣わなくていいから好きに食べな」
「……あれ、バレました?」
「Aちゃん育ち盛りなんだから俺より食べないと」
「なんだか皆木さんお兄ちゃんみたいですね」
「なんだそれ」
クスクス笑う綴が朗らかに笑みを作ればつられてAも微笑む。キーマカレーをよそって至が新作ゲームに没頭して休日は姿を見掛けない話や大学の話をしながらランチを食べ終えるとそれぞれ作業に戻っていった。自室でパソコンに向かい途中まで入力された画面を眺め綴は溜息を付く。
「……お兄ちゃん、ね」
自分を兄のようだと笑いかけ慕うAを思い浮かべてもう一度息を吐いた綴は締切が近いレポートを始末すべくパソコンに意識を集中させた。
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作者名:瀬戸 | 作成日時:2017年2月18日 22時