15話 ページ15
学校からの帰り道､仁花と別れたあと､ふと声を掛けられた｡
「あれ､Aちゃん｡久し振り」
「げ｡………明光さん」
「え?今げって言った?」
「気のせいじゃないですか?
というか､帰ってきてたんですね｡それじゃあ､さようなら」
足早に去ろうとする私の肩をぐっと掴んで引き止める明光さん｡
「待って!待って!?
久し振りに会ったんだからなんか話そうよ!?
ああ､そうだ!あそこのファミレスでパフェ奢るから!」
ぐ､…パフェ…｡なんという甘美な響き｡
ゔ〜､背に腹は代えられない…｡
「…イイデスヨ」
ーーーーー
ファミレスの席に向き合って座る｡
数ある中から注文したチョコレートパフェが届き､「いただきます」と言ってからぱくぱくと食べ始めた｡
お互い､無言の時間が続いたが､不意に明光さんが口を開く｡
「最近､学校どう?」
「別に普通です」
「…じゃあ､拓海とは?」
…あぁ､だからこの人と話すのは嫌だったんだ｡
出てきた兄の名前に､心臓が嫌な音を立てる｡
「分かってて聞いてますよね?」
「…でも､あいつずっと気にしてるんだよ?
Aちゃんには､賞状とかそういうのにこだわらずに､純粋に楽しんで絵を描いてほしいって｡
それに､あれはAちゃんも拓海も悪くないんだから､そろそろ､自分を許してあげたら?」
その言葉に､何がプツンと切れた｡
堰を切ったように喉から声が出る｡
「…なら､私は！何に怒りをぶつければいいんですか?
何に対して怒ればいいんですか…！?
たくさん賞状取らなきゃ､お兄ちゃんに､顔向けできない…!
お兄ちゃんから楽しみを奪った私が､好きな事を楽しむ資格なんてない…!!!」
思わず､声が震えた｡
じわりと目のあたりが熱くなる｡
落ち着くために一度､深呼吸をして､それが溢れる前にぐいっと目尻を拭った｡
「…ごめんね｡泣かすつもりはなかった」
「別に泣いてないです｡
…自分だって弟に避けられてるくせに､
「ぐっ!…意趣返し?」
「それ以外に何があるんですか｡
でもまあ､なんとなく弟さんも私と似たような理由だと思いますよ｡
自己嫌悪｡きっと､大丈夫です｡
…パフェ､ごちそうさまでした」
なんとなく､弟が彼なのかを聞くのは躊躇いがあった｡
別に､そうだからといって何かが変わる訳でもあるまいし､彼に何か言うつもりもないので､結局聞かなかった｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ハイキュー」関連の作品
【黒尾鉄朗】夏色 Sparkling Soda.【第3体育館組】
頼むから嫉妬して。 2【ハイキュー】
【ハイキュー】クールなメガネ男子は実は明るい音楽家!?６【男主】
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まみこ(プロフ) - さくにょさん» まじでそれな……。パスワード制にもう一度して、知りたい人に「メッセージ」として送ればいいんじゃないかな……？そうすれば荒らし減りそう。 (2023年2月25日 16時) (
レス) id: 2e6caf5e65 (このIDを非表示/違反報告)
もか@無気力(プロフ) - さくにょさん» ありがとう!!!コメントめっちゃ嬉しい…!!!さくにょちゃんも頑張って!!! (2023年1月29日 15時) (レス) id: 611339ddb1 (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - なんでこんな心情描写も仕草も全てが綺麗に描写された作品が伸びないのか・・。もかお姉ちゃん！！応援してるよ！ (2023年1月29日 15時) (レス) id: b15bd042db (このIDを非表示/違反報告)
もか@無気力(プロフ) - モモさん» ありがとうございます!!!コメントや評価､本当に励みになるので嬉しいです!!! (2023年1月8日 16時) (レス) id: 611339ddb1 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - めっちゃ好みの度タイプです！更新がんばってください！めちゃ楽しみにしています！！ (2023年1月7日 17時) (レス) @page34 id: 759a61aa3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もか@テスト死にそう | 作成日時：2022年4月28日 23時
