Calm.2 ページ4
目に痛いいつものファーコートをかけたオーナーはふわりとベッドに腰掛ける。
私にはあまりにも大きい、私のベッドに。
「何かあったか?」
”大丈夫です。特にこれといったことは何も”
「フッフ、まあいい。今日は何を読んでいた?」
机の上に置いていた一冊の本をタイトルが見える様手に取る。
すると、一体何が行けなかったのか、オーナーの笑顔が一瞬、消える。
「………あぁ、渡した本に紛れ込んでたか。どうだった?」
”こういった病気もあるのか、としか”
「フッ、なるほど。………あいつとは違うな」
ポツリと呟かれた言葉に、大きなショックを受ける。
だって、私は、オーナーにとって、
「A、来い」
一転していつもの様子に戻ったオーナーに、いつもの様に優しく呼ばれた。
本を机に置き直し、彼の元へ向かう。
オーナーの長い手が私の背中に周り、そのままベッドに横になった。
すぐさま規則的な呼吸を始めた彼に相当な疲れが溜まっていることがわかる。
大きな体の中にすっぽりと収まって包まれる、この時間が好きだ。
そっと彼の目に掛かる不思議な形をしたサングラスに手を掛け、壊れないようにそっと外す。
既に伏せられた瞼の長い睫毛の下には、やはり酷い隈がある。
そっと隈をなぞっても目を覚ます気配のない彼に、一体何度夜を過ごしてきたのだろうか。
オーナーが安眠剤として私を求めているなら、私はそうあるべき。
だけど、
「…………………ロ、シ………………」
果たして私は、誰かの名前を呟き魘されるオーナーのためになっているのだろうか。
私は、オーナーを苦しめてはいないだろうか。
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