【HQ】無気力ガールは歌が好き【歌い手】

理由のわからない躊躇 ページ12

side:Yamaguchi





月「……そう、だけど」



途切れがちの小さな小さなその声に、耳を疑った。



え、あのツッキーが…………認めた！？



好きなものを素直に好きだと言わないツッキーが、俺にとっては当たり前だった。



明光くんのこともあって、それが顔に出すことさえほとんどしなくなったツッキー。



その好き嫌いがわかるようになったのは長い付き合いの賜物だ。



信じがたい気持ちでツッキーと牧谷さんを見てしまう。



ツッキーは顔を背けているけれど、その白い肌が耳まで真っ赤に染まっている。



対する牧谷さんも少し眉を上げて驚きつつも、嬉しいという気持ちがにじみ出ているような気がした。



ツッキーが素直になれたのは、牧谷さんの、麻希さんのおかげなのかな。



だとしたら、麻希さん本当にすごい。



俺なんてイラつかせちゃったときくらいしか顔色を変えられてないのに。



ツッキーの影響で、俺も麻希さんがあげた歌ってみた動画とか生放送とか、何度か見たことがある。



はっきり言って、俺も麻希さんの声すごい好き。



普段はぐてっとしたやる気のない感じなのに、歌うときはスイッチが入ったようなところとか。



麻希クラスタ……通称麻クラとまでは言えないかもしれないけれど、俺もファンの一人には変わりない。



でも、どうしてだろう。



目の前で、ファンの存在に喜ぶ麻希さんに、自分もファンなのだと言い出すことができなかった。

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