【ツキウタ】信じたモノを守り抜け【文スト】

22話・諦める？ ページ39

「……あれ？」

「……悠介…、と芳樹…」

「やぁ、ミナヅ

「違う」

「あ、あぁごめんね、涙」

先程神無月と別れ、渋々とポート・マフィアの本拠点に帰ろうとしてた時。数ヵ月前から見慣れな顔の二人を見つけた。
向こう側から歩いてくる見慣れた顔は、こっちを見つければ軽く手をふった。彼らは、山田悠介と田中芳樹。二人ともポート・マフィアの構成員であり、自分の教育係だ。そして自分と同じ暗殺員である泉鏡花とも仲良くなろうとしている。それは良くも悪くもない、のだが。お人好しなのはポート・マフィアの構成員としては好ましくない。
…まぁそんなのは良いのだ。『ミナヅキ』、とコードネームで呼ぼうとする悠介を制し、しっかりと名前で呼ぶように促す。

＿＿『ミナヅキ』、もとい、水無月涙。幹部である中原中也になぜか気に入られ、中原涙と名乗る時もしばしばある。勿論中也と自分は全く似てないが。似ているのは、『ハナミズキ』に所属する血の繋がった兄の方だ。
『ハナミズキ』は曲の異能力が所属する下級の派生グループだ。元々自分もそこに所属していたが、とある事件を切っ掛けにポート・マフィア本拠点の方へと来ることを許され、所属が変わったのだ。

「涙、どこに行ってたんだい？数日姿を見せないから死 んでしまったかと…！」

「…安心してよ、そんな簡単には死 なないから」

「それで、何処に？」

「……えっ、と。ちょっと、仕事で、色々、と…」

あわあわとする悠介に軽く返事をし、その後に来た質問は、目を逸らしながら言った。目の前の二人が、どうしたと言わんばかりの顔でこちらを見る。

「……僕、スパイとして、別のところに、入ることに、なって…」

言い難そうに、うつむき加減で言う自分の頭を、芳樹がやわらかく撫でた。

「そうか、暗殺員も大変だな」

「スパイか…。自分の体調には気を付けなよ？えっと、それと死 なないようにね？あと、たまに拠点に戻ってきてよ？」

仕事だとすぐに把握した芳樹と違って、悠介は相変わらずだ。
…本当は、仕事ではないのに。自分勝手な行動なのに。二人に申し訳ないなと思いながら、二人に放つであろう最後の言葉を口にした。

「…暫く、会えないけど、元気、でね」

少し言いずらそうに目を背け、二人の横をスタスタと歩いていった。




「＿涙も、青春してるなぁ」

「山田、お前もまだそういうのが似合う年齢だぞ？」

涙が通り過ぎて行ったあと。彼はにこやかに微笑み、彼は嬉しそうに笑っていた。

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