【w.r.w.r.d】私の記憶が無い幼馴染 3 (ページ7)

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そして彼女は扉の所で倒れ、俺は保健室に運んだ
その時に彼女の伸ばした手を、俺は掴んだ

自分でも分からない程、しっかりと

ああ、そうだ
その帰る時に何かが聞こえたんだ
夢の少女と同じ声で途切れ途切れしか聞こえなかったが

そこで恐ろしい程の懐かしさを感じた
それと同時に何かを忘れている事に気付いた

でも、それは全く分からなく、いくら彼女の事を知ろうと分かる事は無かった

次は現実ではなく、夢だったか
あれが本当にAだったのかは些か疑問だが...

真っ暗な夢の中、声が聞こえ返ってくる保障も無いのに、自然と声を出した
すると、薄明りが燈されたかのように明るくなり、彼女が此方に振り返る姿が見えた
その表情は不安気で、顔色も悪かった

お互いに此処が何処だが分からないという話をしたが、そこは確実に夢であり、現実ではない事など分かり切っていた

でも、それでも彼女の声を聞きたかった

独特で、耳に残る声
独特だが、透き通るような声が俺は好きだ

俺が考えている内に彼女は苦しそうにしていて俺が聞くと戸惑いながらも大丈夫だと言った

その後の沈黙、それからの少しばかりの会話
その会話の中で話そうとしたのは夢と両親の涙についてだった

何故話そうとしたのかなんてもう覚えてもいなく、ただ気分だった気がするだけだ

その後はただ見かけたり、顔を合わせたりするだけで何か特別な事は1つも無かった
次に彼女と会話をしたのは気まぐれだった

初めて会った日に使った方法で彼女に話しかけた
トントンと帰る約束をしているのは知っていた
だから、書類は半分だけで終わらせた

俺が書類を掻っ攫っていった時、小声で「ありがとうございます......」と言った

その言葉は書類を片付ける中でもずっと心に残っていた

翌日も仕事を手伝ったがその時に前日に文句を言っていた学年とクラスを聞いておいた
そして更に翌日、彼女には内緒で例の2クラスに事情を話し、金額の調整を行った

その後日、各クラスの学級委員の手紙を渡す際に彼女の察しの良さにも気付いた

彼女を知れば知るほど、それに比例して深まる謎
それは分かりそうで分からない境界で彷徨い続けていた

中学生時代から小学校時代の自分に違和感があった
トントンとの出会いだって、詳しく...いや全く覚えていないのだ
誰かが、何かが、欠けている

そんな曖昧な自分の記憶にどれだけ嫌気が差したか...