JACKALOPE【歌い手】

三十八《senra side》 ページ39

そんなふたりは、はたから見たらどこか特別な繋がりをしているように感じる。

彼の、彼女の周りにいる人とは違う、空間だったり付き合い方だったりをしてる。Aさんはそれをその他大勢のひとりだと思ってるし、うらたさんはそれを当たり前だと思ってる。

もっと自身とか自覚とか持てよって外から見てて思うけど。




「満足ですか」

セ「まんぞくでーす」

「むっかつく顔してんなぁ」

セ「美人でしょ？」

「きゅるんとしたらさらにむかつくんだよなー。そらるさんの方がよっぽど……」

セ「どした？」

「やっば、そらるさんとのコラボ今日じゃなかったっけ…？」

セ「いや知らんがな。確認してみたら？」

「やばいやばやばい。……うわっ、電話かかってきた！」

セ「出たらええやん」

「えー…、どうしよう。やめとく？」

セ「やめとくな。心配してるで、あの人のことやから」

「う"ー…、……も、もしもし、とかくんです。はい、あー、はい。えー、いや、寝てたわけでは、んー、当たらずとも遠からず…いや、それは無い。あー、外にいてて、ご飯食べてるんで遅くなるかも……いやまじすみません、気ぃ抜いてました……」




ガチで落ち込んでるAさん。スマホに［気にせず帰ってええよ］と送ると、片手を顔の前置いてごめんと謝った。財布から5000円札を出すと梅ジュースを飲み干して足早に店を出ていった。

ここで『先に約束したのこっちだから』とか言わずさっとお金だけ置いて遊びに行くところが付き合いやすくて助かる。



ユーチューブでそらるさんの配信を開くと案の定ミュートしてないまま電話したみたいで、コメ欄がざわついている。




［しょぼんとかくんかわいいw］［ブッキングめずらしぃー］

［デートやったんかな？］［普通に恋人いそうだけどねー］




そ［あいつ何気にご飯行くのすきだからな。大方友達と居酒屋でも言ってたんだろ］




セ「うわ、見抜いてる」




そ［デートじゃないでしょ。だったらそっち優先するだろうし。

え？Aに恋人がいたら？んー…、まあ、お兄さんとしては興味津々だよね。でもいい彼女になりそうじゃない？聞き上手だし褒めるの上手いし。

あ、食生活と睡眠時間が問題だけど。まるでまふまふ……。俺は付き合えない。友達で十分］




セ「いい彼女、ねぇ…」

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