二十八《urata side》 ページ29
『……そうですか?』
う『そうそう』
『そうですか…。でも一発屋コースはやだなぁ…』
缶チューハイの中を覗きながらしょぼんとした声を出す。
『しおらしいとこ見るとかわいいなぁと頭を撫でたくなるよね』って、昔から付き合いのあるそらるさんが言っていて、そんな姿この人には見せてんだって少しだけ嫉妬して、『えぇ?さすがロリコン〜』って茶化したけど、俺も人のこと言えないな。妹いたらこんな感じだろうか。
頭に乗せようとした手をテーブルのグラスに置いて誤魔化す。
う『まあ、チャレンジしてみてもいいかもね。とかくのオリジナル興味ある』
そう言うとAはすうーっと目を細めて俺を見た。イラストのとかくんとは違う、外見だけ見れば可愛らしい女子大生のようなAの目は、溶けた氷のようにとろりと揺れていた。
『うらたさんはぁ、いま余裕ですか?』
う『いや、いっぱいいっぱいだよ。忙しいし、やること多いし、休む暇ない』
『そんなに……』
う『いやまあそれは言い過ぎたけど、あれもこれもやりたいってワガママした結果だから、全然苦じゃないよ』
『そうですか……。じゃあ、余裕出来たら付き合ってもらえませんか』
う『え、どこに?』
『行く場所とかはどこでもいいです。特にこだわりないので。貴方とならどこへでも』
う『随分なこと言うね。献身的なカノジョみたい』
『……望むならそんなカノジョになってもいいですよ』
う『え…』
『お姉ちゃんみたいに真っ向勝負は無理だから、私は。目指す像がある方が楽でいいなぁ…』
一瞬止まった思考。徐々に早まる心臓。熱を持った頬に溶けかけた氷が入ったグラスを押し当てる。
今俺、もしかして告白された?今のって告白なのか?
テーブルに張り付くようにうつ伏せるAを、女性として、つまりそう言う、恋愛相手として意識するようになったのはこの時からだ。
……いや、自分の彼女への気持ちを自覚しただけなのかもしれない。
いつか、いつか聞き出そう。『あの時言ったあれってどういうこと?』って。『あれって本気だったの?』って。いくつかのパターンを予想してセリフなんて考えてみたりした。
そして使いどころがないままこんにちまで来ちゃったんです。
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ななき。(プロフ) - かんずめさん» かんずめさん!お久しぶりですー!だいぶご無沙汰しておりました。なんて嬉しいお言葉!好きなものを好きなようにかける環境があるのもかんずめさんのような読者さんがいてくれるおかげです。コツコツ書いていこうと思います!今作もよろしくお願いします! (2021年12月26日 23時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - しおさん» お久しぶりですしおさん!長らくお待たせしまってすみません…。そう言っていただけると自分のペースで頑張れます!色んなところで雪降り出しましたね。たくさん服着込んで作品作り頑張らせていただきます! (2021年12月26日 23時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - 緇さん» はじめまして!コメントありがとうございます。たくさん読んでくださっているんですね?!ご期待に添えるように今回もがんばらせていただきます!(貴重なご意見ありがとうございます(´▽`人) (2021年12月26日 23時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
かんずめ(プロフ) - お久しぶりです。久々にななきさんの新作が出て舞い上がりました。ななきさんの作品が読めるだけでも嬉しいので、躊躇なく好きなように投稿してください!どの界隈の作品も好きなので!語彙力がなく上手く伝わるかどうか不安なのですが、無理はしないでください。 (2021年12月23日 20時) (レス) @page1 id: 6f646e69ca (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - ななきさんの作品が読めるこの環境だけで大変ありがたいことなのでどうぞお好きなようにしてください!毎日寒いですし、お体には十分ご留意くださいね (2021年12月23日 19時) (レス) id: 3a34b78acf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2021年12月23日 17時