JACKALOPE【歌い手】

十六 ページ17

うらたさんは私の特別だ。
決して天才ではなくて、だから努力を惜しまなくて。
周りの才能を持った人間を言い訳にしなくて、貰った愛を大切にする。

とても尊敬している。憧れている。

私はこの人のようにはなれないけれど、それでも。



歩みが遅いと歩幅を合わせてくれて、自分のものよりも私に似合うものを探してくれて、困った人には手を差し伸べる。そして少し照れたように「こんなのなんでもないよ」と笑うんだ。

優しい人。愛される人。尽くされれば倍にして返そうとする人。
損をしやすいけど、かならず周りに助けてくれる人がいる。



あぁ、考えれば考えるほどあの人のことを思い出す。



お姉ちゃん。そう、お姉ちゃんも決してパーフェクトな人間ではなかった。けれどダンスが好きで、努力家で、何よりも眩しい笑顔があった。



『笑われたっていいの。私を見て笑顔になってくれるなら。
馬鹿にされたっていいのよ。この先で驚かせることが出来る。
いつか憧れのあの人たちのようになるって、私は私を信じてる』



そうひたむきに星に手を伸ばす姿は、人の心を惹き付け離さない。そんな彼女はいつしか本当に愛されるスターになっていて、そんな彼女を、私はとても尊敬していた。



迷いもしてる。傷ついてもいる。悔しい思いだって諦めたくなることだって理不尽に怒ることだってあるはずなのに、折れず曲がらず腐らずずっとファンのために友人のために大切な人のために小さな光の元で笑ってる。



姉と似ている彼のことを、私は………愛している。



恋なんかじゃ物足りない。尊敬の派生かもしれない。

けれど、それでも愛してるんだ。


だって、何をされても嫌じゃないんだから。嫌いになれないんだから。

私より大切な人がいたっていいんだ。
むしろ私を好きになるこの人とか解釈違いにも程がある。




(愛してる、うらたさん。あなたを、ずっと……)




声には出せないことを心の中で唱える。報われない願いやもどかしい想い、煩わしい感情こそ私には必要なのだから。

首を絞めてる方が呼吸に必死になるでしょ。
溺れてる時の方が手足を本気で動かすでしょう？

同じだ。私にはこれがないとやっていけない。

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