ホワイトレディ ページ8
「………どうして？芝居下手だったかな」
早「いえ！そんなことはないです。むしろ現実味がこもってて、リアルだったので……すみません」
「謝んないで？ ………友達とちょっと利害が一致しなくて仲違いみたいになっちゃってね。まあ私が悪いんだけどさ」
早「………千里さん、それはとてもいいことですよ」
「え、いいこと、なの？」
早「はい！千里さんはいつも私たちの話を聞いて受け止めてくれるけど、千里さんが誰かの意見に何か言うってあんまりないじゃないですか」
「えぇ、うっそ。結構言ってるけどなぁ」
早「だいたい賛同か改善かです。……分かってくれるのは嬉しいけどつねに同意を求めてるわけじゃないんですよ。その人だって、千里さんに『いいね』や『イエス』だけを望んでるわけじゃないと思います」
「でも、それじゃまずくない？話が進まないし……」
早「いいえ、だから話すんですよ。お互いが納得いく形になるまで。話して話して話して、それでも答えが出ないなら……」
「出ないなら……？」
早「いつでも、相談してください」
可愛らしくて爽やかで、白いアスターの花のように微笑む、はやみん。
早「話し合いにゴールを決めてはいけませんよ。焦らず、ゆっくり、逃げ出さない」
「すごい、はやみんいいこと言うねぇ」
そう言うとはやみんはきょとんとして、それから『ふふふ』と笑った。
早「これ、千里さんが教えてくれたことですよ」
「え、私そんないいこと言ってたの？」
早「はい言ってました。一番大事なのは美味しいものを食べてるタイミングにだってことも」
「……あはは、それは私だなぁ」
早「千里さんに連絡もらったらいつでも行きますから。……たまには、後輩にも頼ってくださいよ」
「……ありがと、はやみん」
はやみんは「どういたしまして」と軽やかに言うと
自分の席に戻って行った。
『話し合いにゴールを決めてはいけませんよ。焦らず、ゆっくり、逃げ出さない』
自分があんなことを言っていたなんてびっくりだ、
人にそんなこと言っといて、真っ先に逃げ出した癖に。
『その人だって、千里さんに『いいね』や『イエス』だけを望んでるわけじゃないと思います』
それなら、どうして………。
助監督「Ｃパートと予告本番いきまーす」
ハッとして台本を持つ手に力を込めた。
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作者名：ななき。 | 作成日時：2019年5月7日 20時
