陸拾陸 ページ18
そ「……お前はあきらめ癖がついてんだな。理解されないってのはとても悲しいことだから、自分と相手の冷えてしまう心を守るために、せめて道は潰さないようにどいて」
「そんないいやつじゃないよ」
そ「……お前がそう思うならそうなのかもしれないね」
「そらさんはどんなことも否定しないよね」
そ「そんでまふは肯定してくれる」
「………うん。根拠ないくせに」
そ「俺は、大人で、きっとお前のためにできることがあるんだと思うよ。お前がして欲しいことをやらせてあげられる。でも俺は今こうしてそばにいることしか出来ない」
「充分なくらいお世話されましたけど…」
そ「これまでの話だよ。出来てしまうことで周りに疎まれたり卑下されたり、逆に不器用になったり社会と足並みが揃わないと馬鹿にされて……お前とあいつはよく似てる」
「そう、かな」
そ「あぁ、お似合いだと思うよ。もっと…早く、…会っていればよかったな…」
首を傾げると、「なんでもない」と薄く笑う。
あんなに無邪気に笑うことはないけれど、真摯にひたむきに向き合うものなんてないけれど、自分の周りをガラスで囲って、自分からは歪んだ社会をぼやけたまま見ている所は、似ていたりするのかもしれない。
井の中の蛙ならぬ、水槽の中の魚だ。泡に紛れて逃げてばかり。寝床を変えて関係を構築し直す。安心できる所を、ここにいたいと思える居場所を、自分はずっと望んでいたんだ。
まだ、願ってもいいだろうか。
自分のような人間も道を選んでいいだろうか。
許してもらえるだろうか。
確かめさせてほしい。自分自身のことを。
「そらさん」
そ「ん？」
「行かなきゃ」
そ「うん」
「あの人に会いたい。から、会いに行くよ」
そ「そっか」
「ごめん、なさい」
そ「なんで謝るんだよ」
「利用した。いいようにあなたを使って、困らせて迷惑かけた」
そ「ふっ、それ言わなければかわいいんだけどなぁー」
そらさんはわしゃわしゃと頭を撫でる。「いいよ、たまには」って笑った。
「ありがとう、そらさん」
そ「こちらこそ」
「え、A迷惑しかかけてないけど」
そ「いや、会えてよかったなって」
「なにそれ…w」
頭に被ってたふわっふわのタオルで目元をぬぐって、立ち上がる。
そ「そのままでいいから」
「でも……」
そ「『ありがとう』」
「ありがとう、ほんとうに」
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ななき。(プロフ) - ゆうさん» 私の作品で笑って泣いていただけているのかと思うと私もぐっときます！コメント感想ありがとうございます！ (2021年12月28日 22時) (
レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - めっちゃ面白いです。本当に泣きました。完結おめでとうございます。 (2021年12月27日 21時) (レス) @page21 id: ff8e58fd81 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - ロツイナさん» 最後までご覧くださりありがとうございます！大好きだって言ってもらえて終わりを惜しんでもらえるなんてとても嬉しいです！他の作品も良かったら楽しんでってくださいませ！ (2021年9月19日 22時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
ロツイナ - 完結おめでとうございます！ずっと大好きな作品です、終わってしまうのはちょっと切ないですが、最後までこの作品を読んでいて楽しかったです！ありがとうございました! (2021年9月17日 18時) (レス) id: 05ff15d5eb (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - かんずめさん» かんずめさん、コメントありがとうございます！いつもほんとに励みになっています！満足していただけて光栄です。これからもそう思って貰えるようにがんばりますね！次回作も良ければみてやってくださいませ！ (2021年9月16日 22時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年8月21日 22時
