朱色金魚と、ラムネ瓶【歌い手】【踊り手】

肆拾壱《urata side》 ページ43

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《urata side》



Aと坂田を追い出したそらるさんは、ドカッとソファー腰を下ろすとまふの入れた冷めた緑茶を飲んだ。




う「おつかれさまです」

そ「ほんとだよ。世話のかかる年下が多くてそらるさん困る」

ま「面倒見良いですね、そらるさん」

そ「………それでもかわいいからね」




ふわっと優しく笑うそらるさんは、少し悲しげに見えた。




ま「本当に、Aさんは母親が嫌いだったんですかね…？」

そ「……よく『すき』の反対は『無関心』って言うだろ？ Aは嫌いになることも出来なかったんだと思う」

う「あんなに憎んでそうなのに？」

そ「どうしようもなく愛してほしいのに相手はこっちを見てくれない。気を引くために男の子の振りをして、望む格好をして、何でもがんばって……」

う「でも、女だからって疎まれた…？」

そ「そう。だからこそ………」




そらるさんはそこで一度言葉を切ってから目を伏せる。




そ「Aにとって最後の希望だったんだよ」

ま「……希望？」

そ「やっと向き合ってくれるんじゃないか、やっと自分を見てくれたんじゃないか、やっと振り向いてくれたんだ……って。でも慣れなくて不器用だから牽制してしまった」

ま「………Aさん、変なとこで頑固だから」

そ「……結局お母さんは変わってなくて、失望して、突き放されて、やっぱダメだったやって下手な作り笑いしてたよ」




信じようとしたのに、頑張って手を伸ばしたのに、怖かっただろうに会いに行って、そしてまた裏切られたのか……。




そ「俺から言えることじゃないかもしれないけど、Aはがんばったよ。行く途中ずっと震えてたから。実の親に会いに行くのにだよ？」

ま「相当勇気のいる行動だったんですよね、10年以上も離れていた訳ですから…」

そ「強がって笑ってはいたけどね。昔からそうやって奮い立たせてたんだろうなって思った」

う「なんで、そんな、そんなに………」




実の親のこと、そりゃあすきになれない日もある。いなくなっちゃえって思ったことも、なんにでも反抗したくなる時もあった。

それでも親に会うのに勇気を出さなくちゃいけないなんて……。

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