ひゃくいち ページ6
「父親から連絡が来て『こっちに来い』って。仕事の手伝いをしてほしいらしい」
そ「………ほ、んとうに？」
「うん」
そ「お前が望むことなの？」
「散々迷惑かけてきたから、少しは役に立たないと」
そ「お前の意思はどうだって聞いてんの。ネットの活動は？歌い手は？イラストの仕事はどうなる？」
「とりあえず今貰ってるのは終わらせるつもり。歌はもう、聞かせられないかな」
そ「………」
「頑張ってたんだけどなぁ。まあ仕方ないよ」
そ「お前、は…もう、親に頼るほど子供じゃないだろ？ 自分の大事なものを全て失ってまで親の言うことを聞くような歳じゃねぇだろうが…」
「そらくん、この間言ってたことと違うよ…？」
そ「……っ…」
「もう変えられない事実で、もう変わらない未来なんだよ。仕方ないって割り切るのが大人で、子供みたいにワガママ言うような私じゃないよ」
背丈も近づいて、笑うようになって、声を重ねて歌えるようになった。
「バイバイ、そらにぃ」
距離感は、たった今離れたように感じる。
嫌われてしまう？ ガッカリだって失望した？
ごめんね。怒っていいよ。呆れてくれて構わないから。
より深く、より強く、私が今貴方の隣にいるってことを感じさせて。
頭の上に彼の手が乗りそうな気配がして目を閉じた。けれどもすぐにその気配は消えて、恐る恐る見ると彼は泣きそうな顔をしていた。あの海で見た彼のように、瞳にしょっぱい膜を貼っている。
(やだ、泣かないで。泣かないでよ……泣かせたくない。貴方をそんな顔にさせたくない。やめて、私が悪かったから。もうやめて…私の、私の英雄を壊さないで……っ…)
そ「………うん」
彼はそれから「体には気をつけて」とか、「夜はしっかり寝なよ」とか、「ご飯ちゃんと食べてね」とか、色んなことをぽつりぽつりと細切れに言って、気づいた時にはリビングに人の熱が無くなっていた。
夢のような人生だった。
私がほんの少しだけ好きになった。
好きだって思わせてくれる人と出会えた。
幸せすぎるくらいの時間を本当にありがとう。
【ミケミヤ-前世勇者】の冒険はこれでもうおしまい。
おしまいだよ。何もかも、バイバイ。
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ちょこ - とてもよかったです！その後話が欲しい！ (2022年4月27日 11時) (
レス) @page16 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - LiLiKaさん» コメントありがとうございます！またお会い出来ましたね！重くなりがちなんですがそう言ってもらえてうれしいです…！ (2020年12月22日 20時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
LiLiKa(プロフ) - 本当に主さんの書くお話はすごく感動します…号泣ものですね。大好きです (2020年12月21日 13時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - 透さん» コメントありがとうございます！なんて嬉しい言葉！ラストスパートです。最後までよろしくお願いします！ (2020年11月20日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
透 - とても素敵なお話です！つい続きが気になって、確認してしまいます。言葉選びのセンス光りすぎです！密かにですが、応援させて頂きますね！楽しみにしています！ななき。さんのペースで楽しさを分けて下さい！この素敵な世界の続きを密かな楽しみに待ってます！ (2020年11月19日 20時) (レス) id: 4afabdb3de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2020年11月18日 16時
