きゅうじゅうはち ページ3
ま「………僕じゃ、頼りない？」
「………」
ま「僕じゃ、まだ支えられない？」
「………」
ま「そらるさんみたいにはいかないけど、僕だってミーちゃんの力になりたいし、ミーちゃんを笑顔にさせたいんだよ」
「………主人公みたいなこと言うね」
ま「違う。これはミーちゃんの言葉だよ」
「えっ、私そんなこと言った？」
ま「『そらるさんみたいにはいかないけど、私は君の力になりたいし、君を笑わせたい』まっすぐ目を見て言ってくれた。他にもあるよ。
『君を望む声が、時に君を動けなくさせてしまうかもしれない。それでも君が幸せになっちゃいけないなんてことぜったい、もう何がなんでもありえないんだからね』」
「よく覚えてんねぇ……」
ま「ミーちゃんはいつも僕の心を暖かくさせるし、もやもやをスッキリさせてくれる」
「そうかなぁ……」
ま「そうだよ」
いつもより少しだけ低い声。心地よくて、ずっと聞いていたくなる。
でも私だけが黙ってる訳にはいかないから。
「頑張れそうだった。もうちょっとで手が届きそうだった。もう少し頑張れば、きっとその手は掴めると思ってた」
ここで立ち止まってしまえば、もう二度と進み出せない気がする。
ここで歩くことをやめてしまえば、この先一生走れない気がする。
そうやって奮い立たせてきた。みんなに貰った愛の何倍も返すために。
「……でも、上手くいかないもんだね。時間切れみたいだ」
ま「時間切れ…？」
私は勢いよく立ち上がって防波堤の上に立つ。
「この海の向こう、どこと繋がってるんだろうね。背伸びしても見えないや」
ま「………っ、まさか………」
「呼ばれたからさ、行かなきゃ」
ま「………い」
「ダメだよ。続けないで」
彼の唇に人差し指を当てる。彼は眉を八の字に曲げて涙を零した。
「泣かないでよ……。私は君を抱きしめられないのに」
ま「どう、して……どうして…」
「どうしたって変えられなかった。ほら、お願いされたら断れない体質でね」
ま「……ッ…そんなの、そんなの…！」
「ごめんね」
ま「……っ…やだぁ…」
「ごめんねぇ……」
波音と混じり合う泣き声は、俯く彼に聞こえただろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです！その後話が欲しい！ (2022年4月27日 11時) (
レス) @page16 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - LiLiKaさん» コメントありがとうございます！またお会い出来ましたね！重くなりがちなんですがそう言ってもらえてうれしいです…！ (2020年12月22日 20時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
LiLiKa(プロフ) - 本当に主さんの書くお話はすごく感動します…号泣ものですね。大好きです (2020年12月21日 13時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - 透さん» コメントありがとうございます！なんて嬉しい言葉！ラストスパートです。最後までよろしくお願いします！ (2020年11月20日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
透 - とても素敵なお話です！つい続きが気になって、確認してしまいます。言葉選びのセンス光りすぎです！密かにですが、応援させて頂きますね！楽しみにしています！ななき。さんのペースで楽しさを分けて下さい！この素敵な世界の続きを密かな楽しみに待ってます！ (2020年11月19日 20時) (レス) id: 4afabdb3de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななき。 | 作成日時：2020年11月18日 16時
