ひゃくじゅう《soraru side》 ページ15
───
剣も盾も鎧もない。魔法だって使えない。丸腰のひとりの女の子。
「こんにちは、ミケミヤです」
マイクを持つ右手は震え、左手はギュッと服を掴む。
「今日という日を夢見たのは、いったいいつでしょう。
貴方が私の声を聞いたのは、どれくらい前でしょう。
約束したあの日から、どれほどの時が経ったのでしょう。
私はもっと頑張るって、貴方に誓った。
みんなに貰った愛の何倍も返すと、届けると宣言した。
いつか絶対会いに行くからと言ったのに、私は裏切った。
資格がないと言われるかもしれません。
今更なんだと怒られるかもしれません。
期待はずれと嘆かれるかもしれません。
戦線離脱した私を、許してくれとは言いません。貴方を悲しませたこと、苦しませたこと、私自身も許せません。
でも、ここで謝ることは違うと思うんです。すみませんも、ごめんなさいも、ここには似合わない。
ありがとうよりももっと、だいすきよりももっと、大きくて熱い気持ちが私の胸にあります。
それはずっと、ずっと前からあるもので、ずっと伝えたかったことで、ずっと言いそびれていたことです」
誰もが次の言葉を待った。彼女の声を待ち望んでいた。
彼女は目をつぶって大きく息を吸う。
ゆっくり目を開けて、囁いた。
「愛してる」
マイクとスピーカーを通して彼女の声が会場に広がる。
これまでたくさんの空を見上げてきた。けれど、こんなに綺麗なものを見上げたのは多分初めてだ。
様々な姿に変わる景色を、彼女は見せてくれることだろう。
そしてそれは今日だけじゃなくて、きっと何度も訪れる。
そんな彼女の成長を、今はまだ近くで見ていたい。
彼女は開いた手を空に向けた。後ろからのライトで彼女はシルエットだけになる。それからその伸ばしたままの腕を下ろしこちら側に向けた。辺りが音を立ててライトアップされる。
「さあ、いっしょに空を見上げよう───」
俺の勇者。勇気あるひと。野良猫のようだった少女。
青かった彼女はオレンジ色に世界を染めて夕日のように輝き出す。
───Fin───
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ちょこ - とてもよかったです！その後話が欲しい！ (2022年4月27日 11時) (
レス) @page16 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - LiLiKaさん» コメントありがとうございます！またお会い出来ましたね！重くなりがちなんですがそう言ってもらえてうれしいです…！ (2020年12月22日 20時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
LiLiKa(プロフ) - 本当に主さんの書くお話はすごく感動します…号泣ものですね。大好きです (2020年12月21日 13時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - 透さん» コメントありがとうございます！なんて嬉しい言葉！ラストスパートです。最後までよろしくお願いします！ (2020年11月20日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
透 - とても素敵なお話です！つい続きが気になって、確認してしまいます。言葉選びのセンス光りすぎです！密かにですが、応援させて頂きますね！楽しみにしています！ななき。さんのペースで楽しさを分けて下さい！この素敵な世界の続きを密かな楽しみに待ってます！ (2020年11月19日 20時) (レス) id: 4afabdb3de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2020年11月18日 16時
