ごじゅうなな《soraru side》 ページ9
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《soraru side》
そ「僕の妹、超頑張り屋さんなの。そんでぜったい『助けて』って言わない」
Aがいなくなった部屋。鼻をすするまふまふの頭を撫で、マイクに口を近ずける。
そ「血は繋がってない。幼なじみって訳でもない。それでも大切な妹で、友達なんです。昔は誰とも関わろうとしなかった野良猫みたいな子が、自分から外に出るようになった。何千人に向けて自分の話をするようになった。それってすごい進歩だと思うんだよね。
今日の配信で、いろいろみんな思うところがあるかもしれない。きっと俺たちだっていろいろ考える」
彼女のことを想って、これを聞いてくれてる人がたくさんいると信じて。
そ「たぶん今、あの子すごい怖がってると思う。色んなことに脅えてる」
言葉の、文字の暴力に俺たちは太刀打ちできない。顔は見えないし、そんなつもりなくても傷つけることもある。
それでも俺の声がひとりでも多くの心を変えられるなら、俺はいくらでも言うよ。
そ「……俺のことならどんなに悪く言ってもいいから、今のあの子を傷つけないであげて。お願いです。あの子から歌を、空を、奪わないで」
ま「僕からも、ミーちゃんのこと意味もなく傷つけるのはやめてください…」
坂「俺たちの友達、みんなにも好きでいてほしいなぁ…」
う「ミケ、ほんとに良い奴だから。頼むわ」
画面には、たくさんの言葉が流れる。
『だいじょうぶ』『だいすき』『もちろんです』『当たり前』
『ありがとう』って書いてるのは、きっとAのリスナーだろう。
そ「愛されてんな、あいつ」
ま「ミーちゃんですから」
坂「やね！」
う「…だな」
そ「ねぇ、ミケが帰ってきたら、なにか歌おうか」
う「また突拍子もないこと言いますね」
坂「さんせー！」
ま「そうですね！こんな時こそ、歌いましょうか！」
「顔、洗ってきました〜……って、どうしたの？」
そ「ミケ、歌うぞ」
「え、歌うの？急ですね」
う「なに歌う。今なら選び放題だけど」
「えー、え、何にしよう……」
坂「全ッ力で楽しいやつがええなぁ！」
「楽しいやつ？んー」
ま「はやく決めないと終わっちゃうよー？」
「なんだなんだ。えー、じゃあ〜───」
赤くなってる目元、少し濡れた髪、俺と同じくらい白い肌。あの頃より伸びた背丈と、あの頃には見れなかった無邪気な笑顔。
天高くお前の声を聞かせてやれ。枯れるまで俺もついていくから。
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作者名：ななき。 | 作成日時：2020年11月2日 15時
