ストレイ・キャット・ラメントⅡ【歌い手】 (ページ8)

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ごじゅうろくページ8

急かさず待ってくれる。耳を傾けてくれる。目を合わせられない私でも分かるくらい優しい眼差しをくれる。

みんな、みんなそうだった。

「ライブやフェスに出ないのはそういう理由なんだ。どうしてもまだ人の目が怖くて、たくさん人がいるところに出ると足がすくむ。期待に応えられなくて、いつもごめんね。今、練習してるからね」

［何も知らないのに出てほしいって言ってた……］

［ゆっくりでいいですよ］［俺たちはいつまでも待つからな］

［もう充分頑張ってるよ。急がなくていいからね？］

「みんな、温かいなぁ。優しいなぁ……」

零れそうな涙を慌てて拭い、マイクに呟く。

「あのね、本当はずっと、暗い話はしたくなかった。みんなには笑ってほしいから。悲しませるようなこと言いたくなかった。みんなにはずっと幸せでいてほしいから。ごめんね。たくさん辛い思いさせてごめん……」

そ「謝んないの」

ま「もっと別の言葉をみんなはまってるよ？」

［そうですよ！謝っちゃダメだよ！］

［推しの優しさにボロボロ泣いてますけどそれがなにか！！］

「そんなに苦しんでたのにいつも笑ってたんだね……」

［僕らはミケに会えただけでじゅうぶん幸せですよ］

「あ、…ぁ……、……ありがとう。私、もっと頑張るからね？みんなに貰った愛の何倍も、ぜったいぜったい返すから。届けるから！……いつか絶対、会いに行くから。……こんな私を、応援してくれてありがと…っ…」

そらるさんに『顔洗って来い』って言われて部屋を出る。今更だけどめちゃくちゃ怖い。みんなのリスナーには関係の無いことだし、みんなの話を聞きたかったはずなのに……。

怖い、怖い、怖い………………それでも、進まなきゃ。

傷ついても、みんなのために進みたい。

彼らの隣で、笑って空を見上げたいから。