ななじゅうなな ページ30
セ「ミケさん、目ってどうしたらいい？」
「目はね、これは結構個性出るんだよ。例えばうらさんは少し細い切れ長だし、志麻さんはちょっとタレ目がち。さかたんはぱっちりで、センラマンは目の下に線があると色っぽくなる」
セ「はぁ〜、目だけでよう分かる」
「色鉛筆で目の中とか変えたらわかりやすいかもね。あとはセンラマンは目元に赤入れなきゃ」
セ「え、赤入れるの？」
「よく入れてるくない？うさぎさん」
セ「センラはキツネなんですけど」
「あ、そっか。じゃあおキツネさま。ペポさん目赤いもんね」
セ「ペポ！うまっ！ようさらさら描けるねぇ」
「慣れですよ」
志「そう言えばミケくんってなんで絵描き始めたん？」
「うぉ、聞いてたんですか？」
志「聞こえてますよー」
テーブルに向かっていた志麻さんがチェアを回してこっちを向いた。ちなみにさかたんは床で、うらさんは奥の方で唸りながらコピックに四苦八苦している。
「絵描き始めたのは打ち合わせが嫌だったからですね。そもそもイラストを頼むだけのお金無かったので」
坂「最初は写真やったよね」
「さかたんも聞こえてたんかい。そうね、父親がカメラマンだからカメラは子供の頃に貰ってて、それでテーマにあったものを撮って歌詞乗せて出してた」
志「え、まって今なんて？」
「それでテーマにあったものを撮って歌詞乗せて出してた」
志「ちゃう、その前」
「カメラは子供の頃に貰ってた？」
志「もうちょっと前」
「………はい、ミケミヤ先生です」
坂「戻りすぎや！ちゃうくてミケミーのお父さんってカメラマンなんか？！」
「え、そうだよ。写真も撮るし、映像も撮るし」
志「カメラマン……なんや」
「そう。パパにはこんな風に世界が見えてるのかって感動したなぁ。スクール行くまではむしろ撮ってもらうの好きだったんですよ」
志「そっか。いいパパやったんやね」
「うん」
ニコッと笑うと、みんなほっとしたような顔をした。
ふたりはあの配信を聞いてくれていたのかな。
それともうらさんたちに聞いたのかな。
何も聞かずにいてくれるのは私が言うのを待ってるのかな。
何を言えばいいんだろう。何を伝えれば分かってくれる？
ぼんやりとした不安が体の中にぽたぽたと落ちてじんわりと広がっていく。
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作者名：ななき。 | 作成日時：2020年11月2日 15時
