帰省 ページ29
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玄関の前で立ち止まること、もうすぐ10分。
良「何してんのお前」
「……っ…!……驚かせないでくださいよ、良平先輩」
良「入んねぇの?」
「入る。入りますよ。ただちょっと準備が………」
良「おじゃましまーす」
「あぁっ!」
母「はーい…って、A!おかえり〜」
「た、だいま…」
母「良平ちゃんも!」
良「こんにちは、ゆいさん。じゃあ、俺はこれで」
母「あら、上がっていかない?美味しいお菓子を買ってきたのよ〜」
良「また三が日の時に来ます。今は娘さんとゆっくり」
母「あらあらありがとう〜。ほらAちゃん、上がって?たくさん話したいことがあるのよ〜」
「あ、うん。………父さんは?」
母「晶さんはお仕事よ」
「大晦日まで仕事……」
母「夕方までには帰ってくると思うけど……。…っと、はい、ピーチティーとバームクーヘン」
「あ、ありがとう」
母「Aちゃんが買ってきてくれたバームクーヘンが美味しくてね〜。色んなところから取り寄せてるの」
「そうなんだ。よかった」
母「晶さんもチョコレート大事そうに食べてたわよ〜」
「……ふーん」
母「では手を合わせて?いただきまーす」
「いただきます」
小学生の頃からこうやって、お気に入りの紅茶とお菓子を用意してお茶会をしていた。中学生になって母が入院した時も、私はティーセットを持って病室を訪れていた。
看護師さんに止められて母は口にすることは出来なかったけれど、私の話を『うんうん、それで?』と優しい笑みを浮かべながら聞いてくれた。
高校に入ってからは随分と疎遠になっていたけど、こうして母の笑顔と紅茶の匂いを嗅ぐと、昔を思い出す。
「…………母さん、体調はどう?」
母「元気よ〜、って言いたいところだけどまずまずかしらねぇ」
「まずまずって?」
母「新しいお薬が今は合っているけれどすぐ耐性がつくと思うって。まあその薬のおかげでこうして我が家に戻ってこれたわけなんだけどね〜?」
ニコッと少女のように微笑む母さん。
(帰ってきたんだなぁ……)
昔から辛い姿を見せたことが無い母さん。気丈か、建前か、本当か嘘か……。その笑顔の奥にどれくらいの暗闇を隠しているのか、私には分からない。
懐かしい間の距離→←クリスマスを過ぎれば《Takuya side》
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ななき。(プロフ) - ゆゆさん» すみませんみおとしてましたぁ!!コメントありがとうございます!亀更新になるとは思いますが、気長に待ってくれると嬉しいです!よろしくお願いします! (2020年11月15日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 昨日知り、全部読まさせて頂きました!更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年5月25日 14時) (レス) id: 2487ef8f40 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - 春さん» ありがとうございます!長くなるとは思いますがよろしくお願いします!がんばりますね! (2019年12月30日 17時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
春 - 続編おめでとうございます!これからも楽しみにしてます!! (2019年12月27日 15時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年12月27日 9時