いかないで…… ページ35
───
────
─────
『Aちゃん!』
小さい手のひらが、こちらに差し出されている。
その手に伸ばそうとしている私の手も小さくて、掴もうか迷ってる間にそのもみじみたいな手は一歩、また一歩と離れていく。
まってよ、まって!
どんどんと遠くへ離れていくその手に力いっぱい手を伸ばしているのに、どうしても掴めない。
『ほーら、早くしないと置いてっちゃうぞ〜?』
走れば走るほどその手は遠ざかり、しまいには霧に隠れてきえてしまった。
どこにいったの?Aをおいてかないで……。
もどってきてよ……
歩いても、走っても、どんなに叫んでも帰ってこないその手を見失ってから、いったいどれだけ時間が経ったのだろう。
いつの間にか歩みは止まっていて、辺りは光をなくしていた。
座り込んで、たまに立ち上がって、数歩進んで、立ち止まって、背伸びをしたり、ジャンプしたり、一瞬見えた光も直ぐに消え、なにも見えないことに絶望して、またうずくまって……。
迷子のように泣くことも出来ないまま、最後に漏れた言葉はあまりにもつたなくて、子供じみていて、それでも誰かに届くことを願って、呟いた。
「いかないで………」
掴めない。追いつけない。そしてひとりぼっちになってしまった。分かれてしまった道の境目で私は棒立ちで俯いている。いつまでも、あの日からずっと。
『いかないよ。どこにもいかない。Aのそばにいるから』
ハッと目を覚ますと、ベッドを背にして本を読んでいる裕貴くんの姿が目に移った。
梶「あ、起きた?おはよ……っといってももう10時だけど」
60人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななき。(プロフ) - ゆゆさん» すみませんみおとしてましたぁ!!コメントありがとうございます!亀更新になるとは思いますが、気長に待ってくれると嬉しいです!よろしくお願いします! (2020年11月15日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 昨日知り、全部読まさせて頂きました!更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年5月25日 14時) (レス) id: 2487ef8f40 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - 春さん» ありがとうございます!長くなるとは思いますがよろしくお願いします!がんばりますね! (2019年12月30日 17時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
春 - 続編おめでとうございます!これからも楽しみにしてます!! (2019年12月27日 15時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ななき。 | 作成日時:2019年12月27日 9時