来るもの少し拒みつつも ページ19
「……あぁ、あれ、まっすーだったんだ」
増「ずいぶん髪も切ったし、背も伸びたから気づかなかったでしょ」
「私忘れっぽいから。ごめん」
増「うんん、オレもわざとバレないようにしてたんだ。情けない頃のオレを思い出してほしくなかったから」
「………じゃあ、なんで今頃?」
増「オレもそうだけど、ふたりも随分変わったでしょ?
あの時は、その場限りの関係って感じだった」
その通りだ。その場の空気感を汲み取って、合わせて、流して、次の約束は曖昧にしたままいなくなる。
いっとき盛り上がっても、次の日にはリセットするように、そうやって心がけてきた。
「そうかな。拓也はもともと仲いいヤツ多かったよ」
増「たしかに。でも興味無いことにはとことん関わろうとしてなかった」
彼は、人をよく見てる。
増「ふたりの間の空気は独特だよね。意味の無い会話を繋いで、飽きたら喋らない。喋らなくても保てる関係って、あんまりないよ」
「執着がないんだよ。来るもの少し拒みつつも、去るものは特に追わず。どれだけ引き止めても進んでいく人や物があることを知ってしまったから、もうどうでもよくなった。どうせどうせ……ってね」
変なことを言ってしまった。取り繕わないと。
「まあ、自分以外に興味を持ち続けてる人もそんないないから、全く興味がなくてもいいでしょ……と勝手に納得しているがね」
増「………オレは興味あるな」
「え?………っと、それはどう言う……」
増「あ、いや!花月だけじゃなくて!……誰にも嫌われないようにって動いてると、人間観察を良くするようになってさ。花月や、江口や、入野もそうだけど、わざと近寄せないようにしてるんだろうなってのが分かるんだ」
「ほんとによく見てるな……」
増「まあね。……オレは合わせるだけが全てだと思ってたから。同調して同感して上手く足並み揃えて、良すぎず悪すぎず、行きすぎず目立たず……そうやってきたからこそ、憧れたんだ」
憧れ?こんな私にか……?
増「みんなは調子乗ってるとか、カッコつけてるとか言ってたけど、やっぱり普通にかっこいいんだよね。自分を持っててさ」
「……まっすーもかっこいいよ。気が使えて、分け隔てなく優しく出来て、困ってる人がいれば手を差し伸べられる。誰にでもできることじゃない」
精一杯伝えてみたけど、まっすーは相変わらず苦笑いのままだ。
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ななき。(プロフ) - 春さん» 春さん!いつもご覧くださりありがとうございます!こちらこそこれからもよろしくお願いします(^^) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
春 - 続編おめでとうございます!めっちゃいいです!!これからも楽しみにしてます!(^-^) (2019年11月28日 17時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年11月27日 16時