いつもより低い声 ページ31
「………私も」
斉「え、A先輩もですか?」
「小さい頃、料理しちゃダメって言われてたのに、りんごを剥いてあげたくて包丁で指をザクッとね」
斉「ヒッ……!」
「大したこと無かったんだけどめちゃくちゃ怒られて、今でも実家のキッチンには立たせてもらえないと思う」
斉「へぇ……なんでも器用にこなすのかと思ってました……」
「そんなことないよ」
斉「そんなことありますよ。運動も勉強も、絵も楽器も、人付き合いも、人の喜ばせ方も」
「……そんなことないって。特に最後のふたつなんてすごい苦手だし」
斉「そんなことあります。A先輩と一緒にいる人はいつも幸せそうだし、先輩と話してる時は楽しそうに笑ってる」
「なんだよ、照れるじゃんか。そんなに褒めてもなんも出ないぞ」
斉「そういうところも含めて、人に好かれるんですよね」
「……そういう壮馬だって女の子にモテるし」
斉「A先輩もよく呼び出されてますよね」
「な、なんで知って……」
斉「保健室から中庭がよく見えるんですよ。桜の木の下、告白スポットって僕でも知ってます」
「……壮馬も2年3年に声掛けられてたでしょ」
斉「あれは世話を焼いてくれてるだけですよ。子猫に餌やってるみたいなもんです」
「なにそれ。あの人たちが頬染めてたの気づいてるだろ」
斉「………A先輩、もしかしてそれ、ヤキモチだったりしますか?」
「はぁ…?」
斉「僕と女の人が話してるところよく見てるってことですよね?どうなんですか?」
「ちが、そんなんじゃないって。ただ私のこと褒めるから、壮馬だって色んな人に好かれてるって言いたくて……」
斉「………A先輩、顔、赤いですよ……?」
顔を覗き込まれて目をそらす。
「いや、暑くて……っていうか暗くて見えないでしょ」
斉「…………先輩、僕は、どんなに女の子に好かれても嬉しくないんです。世話を焼かれても、好意を伝えられても、どうでもいいんです」
「……それ言い方悪いだろ」
斉「だって本当のことですもん。僕が本当に好かれたいと思うのは、好きになって欲しいのは………」
綺麗な顔がゆっくりと近ずいてくる。綺麗な唇が薄く微笑まれていて、澄んだ目に私が揺れている。
さわさわと風に吹かれている髪が、触れそうになるくらい近ずいて、そして……。
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ななき。(プロフ) - 春さん» こちらにもコメントありがとうございます!これからも気長にお付き合い下さい! (2019年10月20日 13時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
春 - 新作おめでとうございます!応援してます!(^-^)v (2019年10月20日 10時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年10月19日 21時