教室の端 ページ7
「あ、りがと……」
坂「え、照れてんの？珍しいなぁ」
んふふっと可愛らしく笑う坂田くん。思春期真っ只中であろう年齢で『好き』と簡単に言えるなんて、モテるんだろうなぁ。このモテる人が、私のカレシかぁ……。
坂「おーい、靴箱入れんの？」
「……あ、うん」
しまった。私の靴箱どれだ？なまえも書いてないし、こんな量からどうやって……。
坂「しょうがないなぁ、ほい、貸してみ」
戸惑いながら坂田くんにローファーを渡すと、少しだけ背伸びをして一番上の扉を開け、替りにスリッパを出してくれた。
「あ、ありがとう」
坂「どういたしまして。その身長なのに上やからいっつも大変そうだなぁ…って見てたけど、毎回これじゃあオレがおらんくなったらどうすんの？」
「えっ、いなくなるの？！」
あまりにも衝撃で大きな声を出してしまった。周りの生徒がこっちを一斉にバッと見る。坂田くんは慌てて頭を下げつつそそくさと私の手を引き廊下に出る。
坂「お騒がせしました〜。……今のはもしもよ、もしも」
「もしも……そっか…よかった……」
坂「せっかく付き合えたんにそうそういなくなったりせんって。……にしてもそんなに驚くなんてこっちが驚いたわ」
「だって、坂田くんがいなくなったら私どうしていいか分からないし……」
そう呟くと坂田くんは真ん丸な目をさらに真ん丸くしてから眉をひそめた。
坂「……どうしたん？昨日からちょっとおかしいで。体調でも悪いん？」
「え、うんん！なんか、最近記憶が曖昧で……夏だからかなぁ」
坂「それ夏関係ないやろ！……え、ほんま大丈夫なん？保健室行く？」
「うんん、だいじょうぶだよ。それより教室行こ」
坂「あぁ、うん」
坂田くんの後についていくと、2-1の教室で立ち止まった。
坂「おはようさーん」
？「お、やっと来たな坂田」
坂「センラは今日も早いなぁ。毎日何してるん」
？「生徒会の仕事よ。……それよりお前の彼女入口で立ち止まってるけど？」
坂「Aちゃん？入らんの？」
「あ、うん」
坂田くんに手招きされ近づく。そこにはテーブルの端に『一世 A』と書かれたテープが貼られている。どうやら私は一番後ろの席のようだ。居眠りし放題だな。
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年1月8日 21時
