砂糖多めの彼 ページ38
セ「はい、出来ましたよ。お姫さん」
「おぉ〜……！」
ドレッサーの鏡を見ると、高校時代より大人っぽい私の姿が。やたらふわふわのミディアムヘアーに冬物の服を身にまとった私はなんだかすごく、なんて言うか、きれいだな。やだ、ナルシストが出てるぞ。
セ「センラ好みのかわいいお姫さんですね〜」
鏡越しに私を見るセンラの表情は中学生の頃とは明らかに違う。なんか甘い。甘ったるい。砂糖多め。もはや生クリームに角砂糖かけた上にカラフルなチョコレートのトッピングをしたみたいな。胸焼けしそう。どうしよう。
セ「さ、行きましょ」
「え、どこに？」
セ「どこにって……どうせプランもなんもセンラやし、Aさんは知らんでいいの」
「そ、そうですか？」
セ「そうです。珍しいですねぇ、行先聞くなんて」
「いや、たまにはいいかなぁーって、あは、はは……」
セ「………ふふふっ、今日は『たまに』が多いですねぇ」
話の流れ的に私はずいぶんセンラに頼りっきりなようだ。センラは敬語だし私は呼び捨てだし。
後輩なんだよな…？甘えまくってる先輩ってとこか？んー…早くつかまないと。
▪▪▪
「…………ひと口、食べる？」
セ「なんですか急に」
「いや、めちゃくちゃ見てくるから食べたいのかと。違った？」
セ「あははっ、じゃあ一口貰います」
「ん」
お皿の上のホットサンドイッチをセンラに渡す。家からほど近いショッピングモールで買い物をすること2時間半。今はモール内のカフェで昼食を取っている。
「………なに？まだいる？」
相変わらずじっと見てくるセンラに聞くと、微笑んだ。
胸がドクンと鳴る。長風呂に入った後みたいに。長距離走して急に止まった時みたいに。後ろから驚かされた瞬間みたいに。心臓が一瞬止まって急激に速度を増す。誰やこいつ……。
セ「いいですって。Aさん細いんやからたくさん食べてください」
そうは言ってもそう見られるとなかなか食べにくいんですけど……。
セ「幸せやなぁ……」
「え、なにが？」
セ「え？」
「いや、『幸せやなぁ』って」
セ「今口から漏れてました？」
「うん。あ、スルーした方がよかった？」
センラは緩やかに頭を降った。
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年1月8日 21時
