瓜二つの別人 ページ26
「先生もいろいろ大変ですね。こんなめんどくさい子供の担任なんて」
坂「あぁ、ほんと……。でもそれでもかわいい生徒たちだからな」
ニカッと笑う坂田先生は中学生の時の笑顔と似ていた。眩しくて真っ直ぐで、優しさの塊のような夕陽色のその表情にきゅっと苦しくなる胸。
深呼吸でおさめて私も笑う。
「坂田先生は充分やってくれてますよ。ありがとうございます」
坂「………お前は手がかからなくていいなぁ」
「優秀ですからね！」
坂「じゃあもっとテストがんばれよ」
「ぎくっ……」
頭を撫でる坂田先生の手は大きくて泣いてしまいそうになる。
違う。この坂田くんは私のことなんて覚えてない。だいじょうぶ。別人。別人だ。忘れなきゃ……。
坂「あ、彼氏」
「え？先生の？」
坂「あほか、お前のだよ」
「え？……あぁ、志麻くんか。志麻くんはまだ私の彼氏じゃありませんよ」
坂「"まだ" ねぇ。青春してんなーw」
「えぇ、まだ。では失礼します」
「しぃーまくーん！」と叫べば、うげっとした顔で志麻くんがこっちを見る。
志「うるさ。………なに、呼び出し？」
「んー？進路のことでちょっとねー」
志「ふーん。それより
「ルナさんが？りょうかい」
志「………」
「どうしたの？」
志「いや、最近くっついてこないなって思って」
「え？」
志「腕とかよく絡ませてきてただろ。いや暑苦しかったからいいんだけど」
「なんだなんだぁー、さてはやってほしいのかー？早く言えってそういうのはぁー」
志「うぜぇ……だから絡ませてくんなって」
「まあまあ〜、そう恥ずかしがらずにぃ〜」
志「恥ずかしがってねぇよ！………ちっ、言わなきゃよかった」
心底鬱陶しそうだけど振り払う感じはない。あれ？案外脈アリだったりするのでは？
ルナ「一世さん！」
「お、ルナさん。どうしたの？」
ルナ「衣装のことで話があるって副委員長が……あ、でも後でも……」
「そっか、わざわざ走ってくれたの？ありがとね」
ルナ「うんん！大丈夫！」
「じゃあ志麻くん、王子頑張ってね」
志「……柄じゃねえっつーの。そっちもな」
「おうよ！……じゃあ行こっか」
ルナ「う、うん！」
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年1月8日 21時
