酸の味 ページ19
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「はっぁ…！」
？「おかえりなさい。Aさん」
「……ごほっ、ごほっごほっ……ッ……ぅう"…」
胃から酸が上がってくる。苦しい喉を抑えてしばらく胸を上下させて落ち着かせる。それからゆっくり辺りを見回すとそこはあの洋館だった。
？「海で少年をかばって溺死ですか。正義感に溢れてますね」
目の前にはあの被り物をしたネコさんがいて、下から見てるからか背後のライトにあてられて、影が深く余計不気味に感じられる。
「………わ、わたし、私、死んでないんですか…？」
？「いえいえ確実に死にましたよ。溺死って言ったじゃないですか」
「じゃあ、なんで…」
？「生きているのかって？確かに死にましたけど、復活したんです」
「………ふっ、かつ…？」
？「そうです。ゲームでよくあるじゃないですか。谷から落ちても、敵に殺されても、大きなモンスターに食われても、何度も何度もやり直しができるってやつ」
「つまり、リスポーン地点に戻された？」
？「ですね」
笑うクロネコさん。……いや正確には笑ってる被り物をつけてるのだが。
にやぁ〜っと引き伸びた口角。大きなボタンでできた目。耳の間にちょこんと乗るシルクハット。見れば見るほど薄気味悪い。赤系統の生地がだんだん血の色に見えてきた。
？「……まあでも貴方の場合そうはいきません。制限時間がない代わりに、残基数には限りがあります」
「限りがあるんですか！？」
？「えぇ、そう何度も何度も生き返られても困りますし」
「私の残りの数は…？」
？「それは……」
「それは…？」
？「教えられません」
「なんでですか！」
？「私も出来れば早く終わらせたいんですよこれ。だから後があると思われたら困る。だったら毎回最後だと思って死ぬ物狂いでやって頂きたいんですよね、文字通り」
「……っ…」
淡々とした言葉で残酷なことを言ってくれる……。
つまり失敗すれば死に、ここに戻される。戻ってきたらクリアするまで続けさせられるってことだ。そして上限に達すればここには来れず、もう二度と生き返ることは出来ない。
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年1月8日 21時
