あだ名 ページ23
二年生と合同の体術の授業。
おれと悠仁の休憩のタイミングが合ったので、最後に“ん“を付ければあだ名だと思っているのか、聞いてみた。
「あー、気にしたこと無かったけど、そうかも」
会って日が浅い相手ってニックネーム付けにくいし、と彼は付け足した。
三文字かつ、最後の文字の母音がiなら“ん“を付けることでスタンダードなあだ名になる。
文字数は増えるが、惰性で口に出している様なものだし。
妥当だな、と得心がいったところで、ついでの疑問が湧き上がった。
『おれにあだ名付けるとしたらなんだった?』
これである。
「うーん、ノウミン?」
すぐ返された言葉に、予想はしていたが、つい噴き出した。
練習中の二年生ズと釘崎、横にいた吉野くんもこちらを見て笑っている。
伏黒も顔を逸らし口元を手で隠していたが、肩が震えていた。
緩く紡がれたおれのあだ名は、ウが伸ばし棒に聞こえた。
おれムーミン谷の仲間じゃないんだけど。
はっきり発音したら発音したで、ただの農民じゃないか。
『おれ、ちゃんとAって呼ばれてて良かった』
しみじみ噛み締めていうと、ついに先輩方が腹を抱えて笑い始めた。
「能見っ、お前、っ人間じゃなくて、ノーミントロールだったのか?」
笑い過ぎて息も絶え絶えになりながら真希先輩が尋ねてくる。
誰がノーミントロールだ。
その発言で釘崎が膝から崩れ落ちた。
耐えきれなくなったらしい。
元凶である悠仁もケラケラと笑っていた。
それを見ておれも妙に可笑しくなってしまい、収まりかけていた笑いが込み上げてきた。
一人の笑いが落ち着きかけると、一人が思い出し笑いをし、また釣られて笑うという無限ループが出来てしまった。
結局授業にならなくなり、終わり頃にやってきた五条先生に全員一発ずつチョップをされたのだった。
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作者名:月裏 餅 | 作成日時:2022年3月3日 13時