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目が覚めると、日付が変わっていた。
昨晩は泣き疲れて寝てしまったようだ。


家入さんに補助してもらい、制服を着て車椅子に乗った。
長袖長ズボンの制服は、巻かれている包帯をほぼ隠してくれた。見えるものは頭くらいだ。この怪我は反動ではなく、気を失って倒れた際に地面にぶつけてできた打撲。

ちょっとダサい。


幸い腕が動かせるので、保健室から教室までは自力で車椅子を漕いで行くことが出来た。


若干苦労したが、なんとか扉を開けると、伏黒と釘崎がおれを見た。

そりゃあ約2ヶ月振りの再開だから、少しは驚くだろう。


誰も何も発さない空気に耐えかねて、


『伏黒、釘崎、おはよう』

おれはぎこちなく笑顔を作って挨拶した。


弾かれたように立った2人は、おれの周りを囲んだ。



「アンタ、大丈夫?!」

「体調はどうだ」


口調は強いが、瞳に見える動揺の色。
本当に心配してくれるのが分かって、作り笑顔が本物になった。


ああ、ここに悠仁がいたなら。
目ぇ覚めて良かった!おかえり!なんて、太陽のような笑みを見せてくれたのだろうか。
任務前に考えていたささやかな願いは、もう叶う事は無くなってしまった。



大丈夫だよ、と言葉を返す。
心の整理はまだついていないけれど、身体は大体問題ない。
事情は一通り五条先生づてに知っているようで、何があったかは聞かれなかった。


チャイムが鳴り、各自の席に戻る。
午前中の座学は一緒に受け、午後の実技練習は見学。


伏黒と釘崎は、一年生ながら京都姉妹校交流会に出るらしく、二年生と練習をしている。おれは?というように五条先生に視線を送ったら、


「Aは駄目ー。人数足りてるし、そもそも怪我治ってないでしょ。日程も迫ってるし、今回は恵と野薔薇に任せなよ」

と言われてしまった。ぐうの音も出ない。
真希先輩と呪具で手合わせしている伏黒を眺めていると、



「今はまだ、回復に専念しな」


珍しく優しい声が聞こえ、再び先生に視線を向けた。
彼は柔らかく微笑んでいて、おれが傷付いたままである事を分かっていて、哀しんでいるようだった。
まるで、愛しい我が子を見るように。


戦っている伏黒、パンダ先輩に投げられている釘崎に目を向ける。
2人とも、悠仁を気にしている様子は無かった。でも、忘れたのとは違うのだろう。受け入れた上で、前を見据えて歩き始めている。



『はい』

ゆっくり、頷いた。



おれも、歩き続けよう。
そして、早く2人に追いつかなければ。

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作者名:月裏 餅 | 作成日時:2022年3月3日 13時

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