・ ページ13
バケモノはおれに背を向けたまま、母親であっただろう“ソレ“を喰っていた。
噎せ返るような血の匂い。
眼前に広がる信じ難い光景に、おれは、
死んじゃ駄目だ、と。
それがいけなかったのだ。
一弾指の間に、部屋のそこらじゅうから黒い煙のようなものが吹き出した。ゆらゆらと形作られたのは、三体の、生前の姿とは似ても似つかないおれの家族。目も当てられない気持ちの悪さだが、おれの家族だと感じ取った。
状況が掴めなかったが、きっとおれが作り出してしまったのだろう。
最初からいた一体と合わせて四体となったバケモノは、全員がおれを値踏みするように見た。
おれが、家族をバケモノにしてしまった。
なによりも大切だった家族を、こんなに醜く。
瞬きもまともにせず、ぼたぼたと涙が零れ落ちた。
身体の震えが止まらない。
家族を……殺したであろう一体は、一瞬おれから視線を外すと、どこかへ消え去った。
残された三体はゆっくりとおれに近寄ってくる。
左から、父親、母親、弟。
嫌だ。
おれの家族はこんなんじゃない。
歯を食いしばった。
かっこよくて、色々なことを褒めてくれた父さんは。
優しくて、頭を撫でてくれた母さんは。
お兄ちゃんと慕って、後を付いてきてくれた可愛い弟は。
こんなんじゃない!!
今までの人生で、比べ物にならない程の強い拒絶。
〈
突然、正面のバケモノが消えた。
放心していると、それを合図のように、左右の二体が襲いかかってきた。
嫌だ。もうこれ以上こんなバケモノを見ていたくない。
明確に、死の気配がする。
目をきつく閉じた。
嫌だ!
死にたくない!!
〈領域展開:
106人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月裏 餅 | 作成日時:2022年3月3日 13時