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バケモノはおれに背を向けたまま、母親であっただろう“ソレ“を喰っていた。
噎せ返るような血の匂い。



眼前に広がる信じ難い光景に、おれは、


家族の死を(・・・・・)、拒絶した。



死んじゃ駄目だ、と。

それがいけなかったのだ。
一弾指の間に、部屋のそこらじゅうから黒い煙のようなものが吹き出した。ゆらゆらと形作られたのは、三体の、生前の姿とは似ても似つかないおれの家族。目も当てられない気持ちの悪さだが、おれの家族だと感じ取った。

状況が掴めなかったが、きっとおれが作り出してしまったのだろう。


最初からいた一体と合わせて四体となったバケモノは、全員がおれを値踏みするように見た。



おれが、家族をバケモノにしてしまった。
なによりも大切だった家族を、こんなに醜く。



瞬きもまともにせず、ぼたぼたと涙が零れ落ちた。
身体の震えが止まらない。


家族を……殺したであろう一体は、一瞬おれから視線を外すと、どこかへ消え去った。


残された三体はゆっくりとおれに近寄ってくる。
左から、父親、母親、弟。



嫌だ。
おれの家族はこんなんじゃない。


歯を食いしばった。

かっこよくて、色々なことを褒めてくれた父さんは。
優しくて、頭を撫でてくれた母さんは。
お兄ちゃんと慕って、後を付いてきてくれた可愛い弟は。



こんなんじゃない!!

今までの人生で、比べ物にならない程の強い拒絶。



擯斥(ひんせき)呪法:拒絶〉

突然、正面のバケモノが消えた。

放心していると、それを合図のように、左右の二体が襲いかかってきた。


嫌だ。もうこれ以上こんなバケモノを見ていたくない。
明確に、死の気配がする。
目をきつく閉じた。


嫌だ!











死にたくない!!





〈領域展開:抗拒不承衾(こうきょふしょうきん)

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作者名:月裏 餅 | 作成日時:2022年3月3日 13時

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