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・心中とは 【太宰治】 ページ5

「では行くよ。」


遂に念願が叶う。


美女との心中。


Aさんというこの美しい人は心中してくれないかと誘ったら、少し考えると了承の返事をくれた。


そこで一緒に川へとやってきた。


『ふふ、嬉しそうですね。』


「やっと願いが叶うよ。」


手を繋ぎ川の流れをみる。


天気も良いし川の流れも調度良い。


『では・・・。』


驚くことに抱き締められた。


『心中とは一緒にですよね?こうしていれば離れません。』


「そうだね。では。」


抱き合ったまま川へ体を傾ければ水の中。


体は離れることなく流される。


段々息が苦しくなってきた。


何時もなら一人の為、この辺りで川辺へ浮き上がり岸にあがったり、誰かに引き上げられたりする。


だが、今回は心中。


今まで経験したことのない苦しさ。


私は痛いのも苦しいのも嫌いだ。


体を上げようかと思ったがAさんに確りと抱き締められている為、身動きが取れない。


これは不味い。


苦しい。


苦しいものだと覚悟はしていたが、ここまでとは。


段々意識もはっきりしなくなってきた。


力が入らなくなってきた時、体が浮いていく気がした。


「ごほっ・・・」


『大丈夫ですか?』


気が付けば川岸に横になっていた。


Aさんは服の端を絞っている。


「君が引き上げたのかい?」


『はい。』


水を含んだ男を一人で?


体を起こせば、その目線に合わせて屈む彼女。


『意識もしっかりして、水も全て吐いたようですし大丈夫ですね。』


あぁ、矢張り美しい笑顔だね。


しかし、笑顔は無くなり静かな怒りを感じた。


『では、体も大丈夫なようなので言わせていただきます。』


目が・・・


『あなたは心中したいと言いましたが苦しくなってきた頃体を動かそうと必死になりました。苦しいのが嫌になったからでしょう。そんなことで心中したいなどと言わないで下さい。それからその後処理する人間の気持ちを考えたことがありますか?人に迷惑を掛けないで下さい。』


もの凄い冷たい声で私は怒られているのだろう、これは。


「君は一体・・・」


立ち上がって軽く服を整える彼女は私が声を掛けた時の彼女で


『私はレスキュー隊員なんですよ。命は大事にしてください。もうお会いしないことを願っています。では。』


そう言って去っていく彼女は美しい。


人に迷惑を掛けないと誓った。

・牛丼 【宮沢賢治】→←・牛乳 【中原中也】



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月宮 柚妃(プロフ) - 姫蛍さん» そんな風に言って頂けて・・・嬉しいです!ありがとうございます! これからもよろしくお願いします(*^^*) (2017年9月23日 19時) (レス) id: 92eed36e83 (このIDを非表示/違反報告)
姫蛍(プロフ) - 太宰さんが人に迷惑を掛けなくなった理由ってこれなの・・・?と思いました。滅茶苦茶面白いですね!!中也の牛乳事件とか・・・。頑張ってください!! (2017年9月23日 17時) (レス) id: 569c06afa4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:tukimiyayuzuki | 作成日時:2017年9月21日 15時

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